...一羽一銭の値打ちもないすずめ、なんの役にも立たぬちっぽけなすずめ、――屋根からこぼれる木の葉のように庭におりると、きょろきょろと右を見、左をうかがい、ガラス戸越しに私から見られているとも知らず、人間もとんびもおらぬと安心をし、ひとつ大あくびをしてから、ぴょんぴょんとむしろのほうへ行き、干芋をつつき、三ツつついては首をあげて空を警戒し、また二口ばかり芋をつつき、雲の影がすうっと通りかかったのにおびえてパッと飛び立ち、口にくわえた干芋をあたら落とし、仲間と羽をそろえてあわただしく畑の上をひとまわりして帰ってくると、物干ざおに三羽並んでとまり、チュンチュン鳴き交わし、三羽すり寄り、大きいほうが負けて横へ横へとおされるうち、一羽はチュンと叫んで逃げ、残る二羽が仲よくあくびをし、片脚をのばして羽をつくろい、やがて目をつむってしゃがみこむと、ぷっくら膨れてうたたねする...
永井隆 「この子を残して」
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