...もしこの漆黒の髪がなかったら浮世絵の顔の線などは無意味な線の断片の集合に堕落してしまって画面全体に対する存在理由の希薄なものになってしまいそうである...
寺田寅彦 「浮世絵の曲線」
...しかしユダヤ人というものの概念のはなはだ希薄な日本人には...
寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
...「三国志(さんごくし)」といったような人間味の希薄なものを読みふけったのであった...
寺田寅彦 「科学と文学」
...ほんとうの科学的精神といったようなものは実は存外はなはだ希薄なものであるように見える...
寺田寅彦 「科学と文学」
...つまり定住した人口が希薄なせいかもしれない...
寺田寅彦 「軽井沢」
...両手を希薄な泥汁(どろじる)に浸したのちに...
寺田寅彦 「空想日録」
...船橋の探照燈は希薄な沈黙した靄(もや)の中に一道の銀のような光を投げて...
寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
...この残りの刺身(さしみ)の幾片かのイメージがこの詩人の午後の半日の精神生活の上に投げた影はわれわれがその文字の表面から軽々に読過するほどに希薄なものではなく...
寺田寅彦 「備忘録」
...暑さや寒さの記憶に比べて涼しさの記憶はどうもいったいに希薄なように思われる...
寺田寅彦 「涼味数題」
...彼女らの静平な凡庸な生活やあまりに希薄な空気は...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...部屋の中の全ての空気および希薄な物質が消滅するとき...
デイビッド・ヒューム David Hume 井上基志訳 「人間本性論(人性論)」
...いかにそれらの小説家が「芸術的」という一枚看板を後生大切にまもっていたところで、創作力の消耗した、希薄な、番茶の出がらしのような作品を出していたのでは、読者をひきつける牽引力はますます弱くなってゆく一方である...
平林初之輔 「日本の近代的探偵小説」
...水中望遠鏡では海水が希薄な空気のようだ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「幽霊島」
...いたって希薄なのであった...
吉川英治 「私本太平記」
...背景を成す沸き立つような半ば光輝を帯びた雲は、曖昧で希薄な、地球を遥かに離れた<彼方であること>(*14)を暗示する言語に絶した何かを抱き、遥かな距離を、全き孤絶を、侘しい荒廃を、足を踏み入れることも測鉛を投ずることも叶わぬこの南の世界の悠遠の死を、ぞっとする程に思い起こさせた...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
...余りに希薄な大気の層のため棲息し得るものといえばガス状の亡霊のみ...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
...我らはその人格的香気のあまりにも希薄なのに驚かされる...
和辻哲郎 「院展日本画所感」
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