...何んだか心淋しいやうな気持で注意した――インスピレーションが離れ去つて行くやうな――表面的な自己に還(かへ)つて行くやうな――何物かの世界から何物でもない世界に這入つて行くやうな――呼吸が静まるのと正比例して...
有島武郎 「An Incident」
...又根岸町字芝生大和田忠太郎(三十)末吉町三の四一畫工高畑己三郎(三十二)の兩人も拘引取調を受け...
石川啄木 「日本無政府主義者陰謀事件經過及び附帶現象」
...第二の時機に書かれたものから第三に至つて作者は再び嚴密に自己に立還つて來た...
今井邦子 「水野仙子さんの思ひ出」
...己は其問題をさう敷衍(ふえん)して見たくはないのだ...
グスタアフ・ヰイド Gustav Wied 森林太郎訳 「尼」
...自己を乗り越えて進もうとする気力の強さには時々驚かされる事もあったが...
高村光太郎 「智恵子の半生」
...自己嘲罵がこみあげてくるが...
種田山頭火 「旅日記」
...その卑しい自己主義から……...
田山録弥 「真剣の強味」
...自己の問題としての資格を主張するのに最も熱心ならざるを得ない概念であるのだから...
戸坂潤 「イデオロギーの論理学」
...自己の身が焼け尽くるまで燃ゆるのである...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...自己自身を限定する事として...
西田幾多郎 「デカルト哲学について」
...単に意識的自己の抽象的意志というものが考えられる...
西田幾多郎 「デカルト哲学について」
...しからば教師たるものは何を標準として自己を律(りっ)するか...
新渡戸稲造 「自警録」
...お前の祭の姿(なり)は大層よく似合つて浦山しかつた、私も男だとあんな風がして見たい、誰れのよりも宜く見えたと賞(ほ)められて、何だ己れなんぞ、お前こそ美くしいや、廓内(なか)の大巻(おほまき)さんよりも奇麗だと皆(みんな)がいふよ、お前が姉であつたら己れはどんなに肩身が広かろう、何処(どこ)へゆくにも追従(つい)て行つて大威張りに威張るがな、一人も兄弟が無いから仕方が無い、ねへ美登利さん今度一処に写真を取らないか、我(お)れは祭りの時の姿(なり)で、お前は透綾(すきや)のあら縞(じま)で意気な形(なり)をして、水道尻(すいだうじり)の加藤でうつさう、龍華寺の奴が浦山しがるやうに、本当だぜ彼奴(あいつ)はきつと怒るよ、真青に成つて怒るよ、にゑ肝だからね、赤くはならない、それとも笑ふかしら、笑はれても搆(かま)はない、大きく取つて看板に出たら宜(い)いな、お前は嫌やかへ、嫌やのやうな顔だものと恨めるもをかしく、変な顔にうつるとお前に嫌らはれるからとて美登利ふき出して、高笑ひの美音に御機嫌や直りし...
樋口一葉 「たけくらべ」
...己(おの)れ自からこれに先だたざるべからず...
福沢諭吉 「学校の説」
...心から己れの母を罵つてしまひさうである……何と...
牧野信一 「鏡地獄」
...己れの気持を唾棄した...
牧野信一 「坂道の孤独参昧」
...私の活動性がいかに自己を忘れて外なるもの新しきものに向わせようとしても...
三木清 「語られざる哲学」
...己が人の家へ立寄りにくかったのは...
シュミットボン Willhelm Schmidt-Bonn 森鴎外訳 「鴉」
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