...ところが、差当り、今目の前に、貴女の一雫(ひとしずく)の涙を頂かないと、死んでも死に切れない、あわれな者があるんです...
泉鏡花 「婦系図」
...加之(それに)銭(かね)だって差当り入るだけ無いじゃないか...
近松秋江 「別れたる妻に送る手紙」
...兎に角イワンは差当りぢつとしてゐるですな...
ドストエウスキー Fyodor Mikhailovich Dostoevski 森林太郎訳 「鰐」
...差当りそれが一番困ります...
永井荷風 「ひかげの花」
...そうかと言って差当り他に捜(さが)すべき職業はなく...
永井荷風 「ひかげの花」
...武者ぶりは……」「天晴天晴(あっぱれあっぱれ)――元亀天正時代ならば押出しだけで差当り五百石の相場はある」丸山勇仙がほめる...
中里介山 「大菩薩峠」
...何故に生きねばならないかの疑問と、これより先へは一寸も歩けない倦怠が二人を悩まして、その間に受け渡された、憂鬱きわまる問答の声は、決してここまで届かなかったものですから、兵馬も、「暢気(のんき)千万な奴等だ――ああなると、全く箸(はし)にも棒にもかからぬ」「でも、可愛らしいところがあるじゃないの、人間はアクどいけれども、ああして行きあたりばったりに酔っては寝、寝ては起き、起きては旅――という気持だけは羨(うらや)ましいわ」「あれだけの気分で、彼等は生きているのだ」「わたしたちだって、あの気分で生きて行きさえすれば文句はございませんね、旅から旅を気任せに、酔っぱらって寝転んだところが宿で、起きてまた歩きだすところが旅――ああして一生が送れれば、あれもまたいいじゃありませんか」「御当人たちはよろしいとしても、差当り、こっちの動きがとれないには困る」「困りゃしないわよ、向うが向うなら、こっちもこっちよ、根(こん)くらべをしようじゃありませんか」「ばかなことを――」「あの人たちが頑張(がんば)り通すまで、こっちもここを動かないことにしてはどう、ねえ、宇津木さん」「そういう緩慢なことはしておられない――とにかく、彼等が眠りに落ちたを幸い、この間に摺(す)り抜けることにでもせんと……」「まあ、あなたは、どうしてそんなにせっかちなのでしょう、少しはあの人たちにあやかりなさいよ」と言って、兵馬の胸にしがみついて怖れをなしていた女が、兵馬の首根っこにぶらさがって、木の実をとりたがる里の子供らが、木の枝をたわわにしてぶらさがりたがるようにしてぶらさがるものだから、「いけない」と兵馬は拒みました...
中里介山 「大菩薩峠」
...差当りの生計に困る筈もなく...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...差当り払う当てがなかったら...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...差当りお前の女房のお静などはどうだ」「――」さすがに平次もギョッとしました...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...差当り平次が当ってみるのは...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...知識の倫理の問題はまた認識の主体が単に表象的・思惟的なものでなく全体の人間であると主張する立場とも差当り無関係である...
三木清 「哲学入門」
...今月は婚礼に悪い月だから来月の中(うち)で日を択ぶ事として差当り媒妁人を頼まなければならん...
村井弦斎 「食道楽」
...さて差当り保と同居するつもりだといった...
森鴎外 「渋江抽斎」
...おれには差当り心当はなけれど...
森鴎外 「そめちがへ」
...今差当り内廷を維持して行くに有利だと思う廉々(かどかど)を話していた...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...いやおれはそれが慥(たし)かだと思うんだ」「差当り実地につきとめることですね」「すぐやりたいんだ」「すると古木邸のほうはもういいわけですか」「貯蔵庫をつきとめて...
山本周五郎 「風流太平記」
...差当り観音谷の始末をつけませんか」万三郎が坐り直して云った...
山本周五郎 「風流太平記」
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