...般若(はんにゃ)の面を頭の上へあげると共に、その石盤を胸におろして、黒板の文字をうつしとりながら、棒だと思えば一棒に当ればワンの一と書けば二二はツー、ツー、ツーるの字の頭をちょっと曲げると三三はスリ巾着切り、かっぱらい挟箱(はさみばこ)だと思うと違います4は四の字でございますフォーア、フォーア、フォーアふかしたてのお饅頭(まんじゅう)、フォア、フォア、フォア五の字は人の面(かお)6は鼻です7は鍵8は瓢箪(ひょうたん)ポックリコ茂太郎はこんな出鱈目(でたらめ)の下に、文字を書き且つ習いつつあったが、「さあ、皆さんがよく御勉強をなさいましたから、今日はこれでお休みの時間にして上げます、お休みの時間には、わたくしが踊りをおどってごらんに入れます」先生を圧迫して、自分が放課を宣告し、右の手を差す手、引く手にして足踏みおかしくはじめると、乳母の膝なる登が笑いました...
中里介山 「大菩薩峠」
...遠くなり近くなる踊りの輪の具合で、それは十七八とも二十歳(はたち)近いとも見えましたが、すぐれて高い背も美しく、差す手、引く手、返す肩、捻(ねじ)る腰、すべての線の躍動する見事さ、雲を踏むかと、足取りの軽さ...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...花見手拭(てぬぐひ)を襟に卷いて、早くも散り始めた櫻吹雪の中で、差す手、引く手、いとも鮮(あざや)かに踊るお仙の十八姿が、全山の見物を、夢中にさしたのも無理のないことでした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
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