...吾人の自負は未だ舞台の広大なるに眩目(げんもく)する程に小心ならざる也...
石川啄木 「閑天地」
...隱居の勘解由(かげゆ)はもう六十の阪を越して體も弱つてゐるが、小心な、一時間も空(むだ)には過されぬと言つた性(たち)なので、小作に任せぬ家の周圍の菜園から桑畑林檎畑の手入、皆自分が手づから指揮して、朝から晩まで戸外に居るが、その後妻のお兼とお柳との仲が兎角面白くないので、同じ家に居ながらも、信之親子と祖父母や其子等(信之には兄弟なのだが)とは、宛然(さながら)他人の樣に疎々(うと/\)しい...
石川啄木 「鳥影」
...此(この)境遇に処せしむるに小心なる臆病なる慈悲心ある――勇気なく独立心に乏しき一個の人物を以(も)つてし...
石橋忍月 「舞姫」
...元々が小心な彼は...
戸坂潤 「社会時評」
...小心な私はより厳重に自分を自分の中に密閉してしまったからであろう...
外村繁 「澪標」
...何ごとについても明白なる意思を発表するものは神経質かあるいは小心なる厄介者(やっかいもの)である...
新渡戸稲造 「自警録」
...かかわり合いになるのを怖れて小心な劉石舟は旅に出たほどだが...
服部之総 「志士と経済」
...二人とも貧乏で小心なのだけれども...
林芙美子 「新版 放浪記」
...何て言い訳しよう」小心な正直者にとって...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「真劇シリーズ」
...謙虚な小心な愛で愛している...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ルイスヒェン」
...小僧あがりの小心な婿...
山本周五郎 「さぶ」
...小心な叔父のことだから...
山本周五郎 「末っ子」
...妻の辰子の媚弄(コケテイカル)な性格と彼の小心な性格との組み合せの中に潛んでゐたのだと思ふとなほ彼は恐ろしくなつて來た...
横光利一 「悲しみの代價」
...小心なる爭鬪を捨てることを...
吉川英治 「折々の記」
...小心なる丞相かな...
吉川英治 「三国志」
...何か訴えては行かなかったか?」清高の小心な善良さにひきかえて...
吉川英治 「私本太平記」
...ごくと唾(つ)を呑む小心な体の硬(こわ)さにもなりながら――「幕命でござれば」と言って...
吉川英治 「私本太平記」
...いかがなものかと」「小心な奴の」大塔ノ宮は笑って...
吉川英治 「私本太平記」
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