...冷やかな山懐の気が肌(はだ)寒く迫ってくる社の片かげに寂然とすわっている老年(としより)の巫女を見ては...
芥川龍之介 「日光小品」
...寂然と靜まりかへつた夜の盛岡の街を...
石川啄木 「葬列」
...白晝も寂然として居て谺をするか...
泉鏡花 「遺稿」
...寂然として安居(あんご)してゐる...
薄田泣菫 「独楽園」
...盈尺の地を守つて寂然として聲なし...
高山樗牛 「人生終に奈何」
...内には寂然として人なきが如く...
高山樗牛 「瀧口入道」
...万物寂然として存在す...
種田山頭火 「其中日記」
...――お柳とあの女との物柔かな声……蒼白い顔……頬の線……鼻そのものが宿す深い影……冷たく輝く愛情の窓である眼……額(ひたい)……これらの相似はこの世にあり得る暗合であるかも知れない……しかしその表情?――彼はいま寂然としている自分の心へ言いかけてみた...
富ノ沢麟太郎 「あめんちあ」
...其処の四辻は寂然としていた...
豊島与志雄 「群集」
...寂然とした裏通りを透して見てる眼に集っていた...
豊島与志雄 「都会の幽気」
...昔ながらの石仏のやうに寂然と扶坐(ふざ)してゐる...
中勘助 「銀の匙」
...寂然として安置されている...
中谷宇吉郎 「壁画摸写」
...平次は眼をつぶって寂然と腕を拱ぬいているのでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...一座は寂然として声を発するものもない...
久生十蘭 「魔都」
...何かしら彼の好奇心をそそるような寂然とした自分の足音の反射...
室生犀星 「幻影の都市」
...家の中はやはり寂然としていた...
室生犀星 「性に眼覚める頃」
...それにも寂然としていた...
吉川英治 「日本名婦伝」
...その間に壁の白色が、澄み切つた明らかさで、寂然と、沈黙の響を響かせてゐた...
和辻哲郎 「月夜の東大寺南大門」
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