...白井権八や小紫もやはりもの寂びた姿をしてゐた...
芥川龍之介 「野人生計事」
...神寂びた宮居は寂然(ひつそり)として居る...
石川啄木 「葬列」
...現在かうして物寂びた御堂の中に心から誦經してゐる尼君となつた和泉式部を思ひ...
今井邦子 「誠心院の一夜」
...神寂びた余りの冷たさはなく...
岩本素白 「六日月」
...神寂びし篠懸(すゞかけ)よ...
上田敏 上田敏訳 「海潮音」
...莫愁湖の畔にもの寂びた堂があり...
上村松園 「中支遊記」
...面にこもつて出てくるあの一種の音声がしづかに物寂びて...
高村光太郎 「能の彫刻美」
...寂びしい花屋敷前が眼にうつるのだ...
武田麟太郎 「一の酉」
...渡舟場が寂びれるにつれて...
豊島与志雄 「渡舟場」
...余は秋寂びた雨の中に立つて此の戸樋を流れるものは何であるかと思つた...
長塚節 「佐渡が島」
...土地のさまはどうしても以前の能褒野を其儘現在に見るやうでいたくも秋寂びて居る...
長塚節 「松蟲草」
...何となく物寂びた雅致を帯びて...
萩原朔太郎 「石段上りの街」
...おのずからまた内容の沁々とした心の咏嘆(寂びしおり)を表出している...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...もの寂びた森のそばを過ぎて...
堀辰雄 「大和路・信濃路」
...上海だけの寂びと潤ひとが無いのは歳月を経ない新市街のためであらうか...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
...城隍廟の屋梁の重なつて欹つてゐる景致の物寂びてゐるのが好かつた...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
...而かも寂びてゐた...
若山牧水 「木枯紀行」
...ゆきゆけどいまだ迫らぬこの谷の峡間(はざま)の紅葉時過ぎにけりこの谷の峡間を広み見えてをる四方の峰々冬寂びにけり岩山のいただきかけてあらはなる冬のすがたぞ親しかりける泥草鞋踏み入れて其処に酒をわかすこの国の囲炉裏なつかしきかなとろとろと榾火(ほだび)燃えつつわが寒き草鞋の泥の乾き来るなり居酒屋の榾火のけむり出でてゆく軒端に冬の山晴れて見ゆとある居酒屋で梓山村に帰りがけの爺さんと一緒になり...
若山牧水 「木枯紀行」
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