...にじんだ声が遠くに聞えやがてぽんぽんと下駄の歯をはたく音あとはだんまりの夜も十一時となれば話の種さへ切れ紅茶もものうくただ二人手をとつて声の無い此の世の中の深い心に耳を傾け流れわたる時間の姿をみつめほんのり汗ばんだ顔は安らかさに満ちてありとある人の感情をも容易(たやす)くうけいれようとする又ぽんぽんぽんとはたく音の後から車らしい何かの響き――「ああ...
高村光太郎 「智恵子抄」
...坊主枕の安らかさもうれしかつた...
種田山頭火 「行乞記」
...貧しい中の安らかさ...
種田山頭火 「行乞記」
...そして私に於てはその安らかさが寂しさを償うて余りあり...
種田山頭火 「行乞記」
...○本然の自己に帰つて落ちついた安らかさ...
種田山頭火 「其中日記」
...何か大衆のなかに働いてゐる人の安らかさを思ふやうになつてゐた...
徳田秋声 「町の踊り場」
...私はこんな安らかさの中に...
外村繁 「夢幻泡影」
...なんという平和だろう!……なんという安らかさだろう!……数歩向こうには隠れた泉が...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...ぶっつかるべきものにぶっつかっていった後の安らかさだった...
豊島与志雄 「二つの途」
...ローマ・カトリックの僧位を獲(え)て始めて生活の安らかさを確保したのである...
野村胡堂 「楽聖物語」
...はじめて落着く場所にかえったような安らかさと...
原民喜 「秋日記」
...かすかな悶えのなかに何とも知れぬ安らかさがあつた...
原民喜 「ある時刻」
...何と安らかさがたたえられている情景だろう...
宮本百合子 「権力の悲劇」
...あなたに、これだけ書いて、家の中の空気おわかりになるでしょう? 林町がああ腰をぬいて暮して居るし、私はキリキリまいをしているし、ここでは、お母さんを中心に活々(いきいき)と軸がまわっていて、又別な楽しさ、安らかさです...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...体の内に何とも云えない暖かさと安らかさとがある...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...どこか精神の安らかさや...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...一人身の空襲下の起居の方が安らかさを取り戻すに都合は良く...
横光利一 「夜の靴」
...岡のうへの木立一帶に黝(くろ)み靜もり岡を掩ひ木立を照しわが窓さきにそゝぐ夏の日の光に冷たさあれわが凭る椅子腕を投げし卓子(てーぶる)脚重くとどける疊部屋をこめて動かぬ空氣すべてみな氷のごとくなれわがまなこ冷かに澄みあるとなきおもひを湛へ勞れはてしこゝろは森の奧に古びたる池の如くにあれあゝねがふわが日の安らかさわが日の靜けさわが日の冷たさを...
若山牧水 「樹木とその葉」
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