...しかしその安らかさも...
芥川龍之介 「六の宮の姫君」
...にじんだ声が遠くに聞えやがてぽんぽんと下駄の歯をはたく音あとはだんまりの夜も十一時となれば話の種さへ切れ紅茶もものうくただ二人手をとつて声の無い此の世の中の深い心に耳を傾け流れわたる時間の姿をみつめほんのり汗ばんだ顔は安らかさに満ちてありとある人の感情をも容易(たやす)くうけいれようとする又ぽんぽんぽんとはたく音の後から車らしい何かの響き――「ああ...
高村光太郎 「智恵子抄」
...そして私に於てはその安らかさが寂しさを償うて余りあり...
種田山頭火 「行乞記」
...見下げられる安らかさ...
種田山頭火 「其中日記」
...何か大衆のなかに働いてゐる人の安らかさを思ふやうになつてゐた...
徳田秋声 「町の踊り場」
...精神生活の停止もしくは低下に身を任せた安らかさだった...
豊島与志雄 「波多野邸」
...今までにない安らかさが...
新美南吉 「良寛物語 手毬と鉢の子」
...安らかさと明るさが全曲を支配している...
野村胡堂 「楽聖物語」
...何とも言えぬ安らかさが...
野村胡堂 「眠り人形」
...恋などとはたかのしれたものだ散る思いまことにたやすく一椀の飯に崩折れる乞食の愉楽洟水(はなみず)をすすり心を捨てきるこの飯食うさまの安らかさこれも我身なり真実の我身よ哀れすべてを忘れ切る飢えの行尾を振りて食う今日の飯なり...
林芙美子 「新版 放浪記」
...はじめて落着く場所にかえったような安らかさと...
原民喜 「秋日記」
...かすかな悶えのなかに何とも知れぬ安らかさがあつた...
原民喜 「ある時刻」
...泣いて泣いて泣きあかした後の安らかさとでも云ふのでありませうか...
牧野信一 「青白き公園」
...――今なら反つて落ついて仕事が出来さうな安らかさを感じた...
牧野信一 「冬の風鈴」
...自分でもその本態をはっきりつかめずに幸福や安らかさを思っている心を...
宮本百合子 「幸運の手紙のよりどころ」
...不満足な安らかさを覚えて来た...
横光利一 「上海」
...巷の恋に代った安らかさを病人に与えるために他ならない...
横光利一 「花園の思想」
...そういう安らかさは明国にはない...
吉川英治 「新書太閤記」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??