...ほんとうをいうと葉子がどこまでも倉地に対してひけ目になっているのを語るに過ぎないとは葉子自身存分に知りきっているくせに...
有島武郎 「或る女」
...硯友社は思う存分に傍若無人にこの気分を発揮したので...
内田魯庵 「硯友社の勃興と道程」
...そうして百蔵の胸倉を取って思う存分に文句を言いました...
中里介山 「大菩薩峠」
...夜は鬼が出て存分に夜食を貪(むさぼ)るという段取りになる...
中里介山 「大菩薩峠」
...十二「そのお方はどなた様ですか、あなた様の御親戚のうち、或いはお知合いの方で、まずあれならばと思召(おぼしめ)すようなお心当りがございましたか」「いいえ、ちっとも知らない人です、なんでも連れ子をして、このごろ家に居候(いそうろう)をしていた他国者なんだそうですが、それを見込んで父が親子養子にすると申しますから、御存分に、身分素姓などのことをかれこれ申すくらいなら、最初から私が嗣(つ)ぎますと、私は言いきってしまいますと、この場はそうでも、後日ということもある、他人を相手のことだから、これに判をしなさい、父の認めたこれこれの養子に家督一切を譲っても、後日に至って毛頭異存のないというこの書附に判を押しなさいと、父が申しますものですから、ええ、ようござんすとも、ようござんすとも、判などは幾つでも、どこへでも捺(お)して上げますと、私はその証文へ自筆で名を書いて、女だてらの血判までしてやりました」「あなた様のお名前を書き、血判までしておやりになりましたならば、その証文面をイヤでも一応はごらんになりましたでしょう、あなた様に成代(なりかわ)って家をおつぎになる、父上のおめがねにかなった新しい御養子というお方は、いったいどのようなお方でございましたか――せめてそのお名前くらいは」弁信法師が念を入れて、根深くたしかめようとすると、お銀様が、「本人の名は、与八とだけ書いてあるのを見ました、その傍に並べて、郁太郎(いくたろう)と書いてあったようです、郎という字かと思いましたが、郎太郎という名前もないでしょうから、あれは郁太郎――つまり親が与八で、子が郁太郎、それが私に代って、父の家を引きついで、寝かし起しをしてくれる親子養子になったことと思います」「何とおっしゃいます、与八に、郁太郎――」そこで、物に動ぜぬ弁信法師の語調が、いたく昂奮したような様子が歴々です、お銀様は言いました、「わたしは、与八がどういう人で、郁太郎という子が誰の子だか知りません、知ろうとも思いません、ただあの二人が、これから藤原の家を踏まえて、わたしに代ってあの家を立ててくれることを、御苦労だと思っています、いいえ、立ててくれるのか、つぶしてくれるのか、それも知りたいとは思いません」そうすると、弁信法師が抜からぬ面(かお)で答えて言うことには、「その与八さんとやらは、おそらく、お家をつぶしてしまうでございましょう、また、潰(つぶ)されても悔いないと思えばこそ、あなたのお父様も、その二人を御養子になさる御決心がついたのです」「いったい、家を起すの潰すのということが、私にはよくわかりません」「左様でございますとも、諺(ことわざ)に女は三界(さんがい)に家なしと申しまして、この世に女の立てた家はございません、本来、女人(にょにん)というものは、物を使いつぶすように出来ている身でございまして、物を守って、これを育てることはできないものなのでございます、家を起すのは男の仕事でございまして、家をつぶすことは女の仕業(しわざ)なのです、もとより、すべての男が家を起すべきもの、すべての女が家をつぶすべきものとは申しませんが、この世に、女の起した家というものはございません、本来、女には家そのものがないのですから...
中里介山 「大菩薩峠」
...己(おのれ)の中にあつて未(ま)だ己の知らないでゐる力を存分に試みることだつたのではないのか...
中島敦 「環礁」
...存分に美しい旋律を氾濫させたのは...
野村胡堂 「楽聖物語」
...存分に庶民を踊らせる捕物小説は...
野村胡堂 「随筆銭形平次」
...存分に調べてみたかったのです...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...存分に駆け出しても...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「入らつしやい」木戸に坐つて居る鹽辛聲(しほからごゑ)は、四十前後の不景氣な男で、その頭の上に掛け並べた泥繪(どろゑ)の具(ぐ)の看板は、存分に下品で、そして存分に刺戟的でした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...こんなのが存分に化粧をして...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...どうぞ御存分にお捜し下さい」「では先ず...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...ただ天理に従いて存分に事をなすべしとは申しながら...
福沢諭吉 「学問のすすめ」
...その存分に任(まか)すべしという規定があり(Noxa deditio)...
穂積陳重 「法窓夜話」
...思う存分に飲んで酔わないと...
柳田国男 「木綿以前の事」
...友達は倒れながらそう叫び、私は刀をひきました、私は私で、存分にやったと思ったのです、存分に、……友達は地面に倒れたまま、私にこう呼びかけました...
山本周五郎 「橋の下」
...南光坊は存分に、宝蔵院の現門下を蹂躙(じゅうりん)し尽したかのように、やがて立てていた槍を横に直した...
吉川英治 「宮本武蔵」
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