...つい隊長様なんぞのお耳へ入って、御存じだから、おい奴さん...
泉鏡花 「海城発電」
...奴さんこれだけは仕方がないものだから Very good と書いて返した...
高浜虚子 「漱石氏と私」
...(よし、お前のような恩知らずの畜生(ちくしょう)のところには、おれと云ってもおってやらないさ、帰る)と云うと、(帰ってくださいとも、犬のような奴は、一刻も置くことは出来ません、帰ってください、出てください)と、女は奴さんに向って進んで来て、突き飛ばしそうにする、奴さんも肱(ひじ)を張って女を迎えようとしたが、思い返して室(へや)の外へ出た、女は追って来て扉(ドア)をぴしりと締めたさ、室(へや)の出口には、蒼白(あおじろ)い瓦斯燈(がすとう)の光があって、その光の中に僕の顔が浮き出ていたが、奴さんは僕の顔を知らないから、(変な顔が見えたぞ、頭の具合かな)と、眼をつぶって頭を一つ揮(ふ)ったさ、しかし、僕はまだ顔を出していたから、奴さんまた僕の顔を見たが、もうその時は、頭の具合かなどと、己(じぶん)の頭を疑ってみるような反省力は無くなっている、奴さんは恐れて、螺旋形(らせんけい)の階段を走りおりて街路(とおり)へでたのだ、そして、奴さんの意識は朦朧(もうろう)となってしまったさ、奴さんは人道(じんどう)も車道(しゃどう)も区別なしに歩いていると、荷物(かもつ)自動車がやって来たさ、奴さんは腹部を引かれて大腸が露出したが、それでも二日ばかり生きていたのだ、君は昨年の九月の新聞に、満伊商会の支店長が過(あやま)って自動車に轢(ひ)かれて、死亡したと云う記事の載っていたのを読んだことがあるだろう、あれさ」三造は頷(うな)ずいてみせた...
田中貢太郎 「雨夜草紙」
...「それで、奴さん、何と云ったのだ」丹前の前には円い食卓(ちゃぶだい)があった...
田中貢太郎 「春心」
...「じたばたしたら、殴(たた)き殺すのだから、奴さん、動かれないのだ」「そうか、そうだろう、ふざけたことをしやがってるから、だいち、その婆あがいけねえ、いい年をして、聞きゃ出入だと云うじゃねえか、大恩を忘れやがって、馬の脚なんかをとり持つなんて、不埒千万(ふらちせんばん)だ」岡本は室の中のむせむせするのが厭(いや)だった...
田中貢太郎 「春心」
...この忍耐だけを説いている」「奴さん...
直木三十五 「南国太平記」
...もう一人並んでいた奴さんの...
中里介山 「大菩薩峠」
...貰わないね」「それでどうしました」「貰わないで偸(ぬす)んだ」「おやおや」「奴さん手拭(てぬぐい)をぶらさげて湯に出掛けたから...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...あーあ! 私の代訴人が奴さんの痛いところをずばりと突いた時は...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...礼奴さんが校庭の入口でキャラコさんを呼びとめて...
久生十蘭 「キャラコさん」
...仲直りやもの」「染奴さん...
火野葦平 「花と龍」
...「染奴さん、ちょっと、話したいことがあるの...
火野葦平 「花と龍」
...……染奴さん、玉井さんは、もう、あたしと深い仲なのよ」「嘘(うそ)、嘘」「嘘なもんかね...
火野葦平 「花と龍」
...おれのうちに似た家は奴さんの家より他にやあねえ筈だ...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...どんなもので! 奴さん忽ち名称(なまへ)を想い出しをつたではごわせんか! とな...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...だが、あのおやぢを責めることも出来ねえさ、奴さんは馬鹿で、あれつきりの人間だからなあ...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...ここ四五日は奴さん...
三好十郎 「肌の匂い」
...奴さんたちの身になってみりゃ……」「少くとも...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「ぶどう畑のぶどう作り」
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