...これが親仁(おやじ)は念仏爺(ねんぶつじじい)で、網の破れを繕ううちも、数珠(じゅず)を放さず手にかけながら、葎(むぐら)の中の小窓の穴から、隣の柿の木、裏の屋根、烏をじろりと横目に覗(のぞ)くと、いつも前はだけの胡坐(あぐら)の膝(ひざ)へ、台尻重く引つけ置く、三代相伝の火縄銃、のッそりと取上げて、フッと吹くと、ぱッと立つ、障子のほこりが目に入って、涙は出ても、狙(ねらい)は違えず、真黒(まっくろ)な羽をばさりと落して、奴(やっこ)、おさえろ、と見向(みむき)もせず、また南無阿弥陀(なむあみだ)で手内職...
泉鏡花 「海異記」
...「奴(やつこ)さん...
薄田泣菫 「茶話」
...阿呆な奴やと、笑うてくれやはるか知らんけんどね」二人は大津の県庁裏の堤に腰を下していた...
外村繁 「澪標」
...本陣が胡瓜(きゅうり)の塩おしと菜のゆでたのをもってきてくれたので鴨の話をしたら それは一つはよく舞う奴で 一つは水をくぐるのが得手なのだ といった...
中勘助 「島守」
...さあお出しなさいまし」贋金使いは絡(から)みつく奴を蹴飛ばして...
中里介山 「大菩薩峠」
...変な奴ばかり集まっている船だ...
中里介山 「大菩薩峠」
...と散々叱つて貴様の様な奴は役に立たぬから帰つて仕舞へと怒つて居りました...
楢崎龍、川田雪山 「千里駒後日譚」
...お玉さんを殺した奴は...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...氣味の惡い奴等もゐなくなるだらうとも思つてゐた...
長谷川時雨 「日本橋あたり」
...吉兵衛というやつはよっぽど執念ぶかい奴にちがいない...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...ちやんと奴さん帽子をかぶり...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...そんなことを刷りこみをつた奴の面に唾でも引つかけておやりなされ!大露西亜人(モスカーリ)の畜生めが...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...奴は美男だし大金持ちだから...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「諜報部」
...その文科の学生といふ奴が実にやりきれないんだ...
牧野信一 「渚」
...そして又些(ち)と酒が廻つて来ると湯村の手を握つて、「憎い奴だ、君のやうな面憎(つらにく)い男は無い...
眞山青果 「茗荷畠」
...やはり婦人のうちなる暴君か奴隷かが跳梁して...
宮本百合子 「異性の間の友情」
...アムリの奴め――しかし...
横光利一 「上海」
...主人の難儀を幸いに、あの奴らはみな、家財を盗んで逃亡しおったな...
吉川英治 「親鸞」
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