...奥床しい門構えの家だった...
芥川龍之介 「玄鶴山房」
...その挨拶を受けらるる時の奥方が、端然として針仕事の、気高い、奥床しい、懐(なつかし)い姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、いよいよ後暗(うしろめた)さに、あとねだりをなさらないなら、久しぶりですから一銚子(ひとちょうし)、と莞爾(にっこり)して仰せある、優しい顔が、眩(まぶし)いように後退(しりごみ)して、いずれまた、と逃出すがごとく帰りしなに、お客は誰?……とそっと玄関の書生に当って見ると、坂田礼之進、噫(ああ)、止(やん)ぬる哉(かな)...
泉鏡花 「婦系図」
...品があって奥床しい...
上村松園 「京のその頃」
...はるかに奥床しいところがある...
丘浅次郎 「人間生活の矛盾」
...その絵は覚束ない弱い光りを受け留めるための一つの奥床しい「面」に過ぎないのであって...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...奥床しさ云うもんを認めてくれる男性もあるやろうと思う...
谷崎潤一郎 「細雪」
...奥床しい構えであった...
谷崎潤一郎 「少年」
...過ぎ行く舟の奥床(おくゆか)しくも垂込(たれこ)めた簾の内をば窺見(うかがいみ)ようと首を伸(のば)したが...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...座敷の床の間に其の家伝来の書画を見れば何となく奥床しく自(おのづか)ら主人に対して敬意を深くする...
永井荷風 「水 附渡船」
...奥床(おくゆか)しいとも歯痒(はがゆ)いとも見ている人もありました...
中里介山 「大菩薩峠」
...風静(しずか)に波動かざる親鸞上人の胸懐はまた何となく奥床(おくゆか)しいではないか...
西田幾多郎 「愚禿親鸞」
...やがて一年あまりも持ちつづけられた奥床しさを今もなつかしく思う...
額田六福 「解説 趣味を通じての先生」
...一種の奥床しさがあって...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...なかなか奥床(おくゆか)しいのである...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...なにやら奥床しい...
久生十蘭 「奥の海」
...ただ質素であると云ってしまうにはあまり奥床しく思われる...
堀辰雄 「恢復期」
...何とも言えず奥床しく...
堀辰雄 「かげろうの日記」
...ちょっと奥床しい色合いというものだろう...
山本周五郎 「長屋天一坊」
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