...海老屋(えびや)の屋根の天水桶(おけ)の雪の遠見ってのがありました...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...「へんな夢だよ、俺が歩いてると、二人の女の子が出て来て、奥さんがお待ちかねだと云うから、往ってみると、奥さんらしい女がいて、響応(ごちそう)になってると、女が盃(さかずき)をくれと云うので、やろうとしているうちに、二人の女の子は鵜(う)になって飛ぶし、女は内裏雛(だいりびな)のようになったのだよ」「それで、びっくりしたのか」「そうだろう」広巳は笑って頭を掻(か)いて、「へんな夢だよ」「女の子が鵜になった、鵜になるはへんだね、なにかい、この比(ごろ)鵜を見たことがあるかい」「見た、何時(いつ)か品川の帰りに、あすこの八幡様へ入ってみると、天水桶さ、あの拝殿の傍にある鋳鉄(いもの)の縁(ふち)に、鵜がいて、ばさばさやってたのだ、ありゃあすこの池にいるだろうか」「さあ、それは知らないが、それを見たのか」「そうだよ」「蒲鉾(かまばこ)にいろいろの魚を入れるように、夢も見た材料で出来るのだね」「そうだなあ」「それじゃ、その奥さんのような女は、どうだ」広巳はにやりとした...
田中貢太郎 「春心」
...私はこの天水桶の蔭に隠れておりますから...
中里介山 「大菩薩峠」
...天水桶の伏兵をつとめていた昼の桶屋さん――の声に相違ないと...
中里介山 「大菩薩峠」
...後ろの浜屋の天水桶の蔭から捲き起ったと見ると...
中里介山 「大菩薩峠」
...あの大きい天水桶(てんすいおけ)はなくなっていた...
新美南吉 「最後の胡弓弾き」
...天水桶から水を汲み出して消しましたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...お品さんは浪花屋の天水桶へ目印の栞(しおり)を書いて...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...向うの天水桶の蔭だよ」八五郎は思わず小僧の指さす方に眼を向けました...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...あの天水桶の傍まで行くうち...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...天水桶(てんすいおけ)や...
長谷川時雨 「流れた唾き」
...橋の下、塀の片闇、天水桶のかげ、柳の根もと...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...枝の下にはコンクリートの天水桶があって自然と爪先がその上に届く...
久生十蘭 「魔都」
...つい其所(そこ)の天水桶(てんすいおけ)に吸いついてしまうと...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...天水桶をはなれて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...見つけた天水桶――黒く...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「旦那さま、お約束のところまで――」と、先棒が、汗をぬぐって、いいかけたとき、突然、天水桶の間から、ぬっと魔物のように現れて、ふところに、右手を――恐らく、匕首(あいくち)の柄(つか)をつかみしめているのであろう――つかつかと、かごに歩み寄った長崎屋――その、髷(まげ)がゆがみ、鬢(びん)はみだれ胸元もあらわなすがたに、びっくりして、かごかきが――「わりゃあ、何だ? 気ちげえか――」息杖を取りなおすひまもない――キラリと、白く、冷たく光る短い刃が、鼻先きにつき出されたので、「わああッ!」と、後、先、そろって、大の男が、しかもからだ中、文身(がまん)を散らしているのが、一どきに、五間も飛び退いてしまう...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...天水桶(てんすいおけ)があった...
吉川英治 「松のや露八」
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