...夫は夜寒の長火鉢の向うに...
芥川龍之介 「秋」
...伝吉は夜寒(よさむ)の田舎道(いなかみち)を山のかげにある地蔵堂へ行った...
芥川龍之介 「伝吉の敵打ち」
...着飾(きかざ)った芸者たちがみがき上げた顔をびりびりするような夜寒(よさむ)に惜しげもなく伝法(でんぽう)にさらして...
有島武郎 「或る女」
...冷えこむ冬の夜寒の中にこちんとしてゐた...
有島武郎 「An Incident」
...毎晩裾から吹上(ふきあげ)る夜寒を怺(こら)へて...
石川啄木 「足跡」
...(猿(さる)どのの夜寒(よさむ)訪(と)ひゆく兎(うさぎ)かな)で...
泉鏡太郎 「十六夜」
...秋の夜寒にたえやらで...
井上円了 「おばけの正体」
...偶然とはいひながら夜寒の句をふまへてよく首尾をとゝのへてゐるのも妙である...
心猿 「荷風翁の發句」
...夜寒の寝覚を思ひやり...
上村松園 「謡曲と画題」
...九月半(なかば)ノ事ナレバ夜寒シキリニシテ手足モヒヘ...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...ひしひしと夜寒が身に沁みた...
寺田寅彦 「異郷」
...水の粉やあるじかしこき後家の君尼寺や善き蚊帳垂るゝ宵月夜柚(ゆ)の花や能酒蔵(ざう)す塀の内手燭(てしょく)して善き蒲団出す夜寒かな緑子の頭巾眉深きいとほしみ真結びの足袋はしたなき給仕かな宿かへて火燵(こたつ)嬉しき在処(ありどころ)後の形容詞を用いる者...
正岡子規 「俳人蕪村」
...樫の木の中に灯ともる夜寒かな家に帰りつく...
正岡子規 「夜寒十句」
...浪路は、まだ遠い二人の仲を近よせる、いい仲立を得て、「もういつか、秋も深うなって、夜寒が、沁みる――さ、酌をしますほどに、ゆるりとすごすがようござります」と、ほっそりした手に、杯を取って、雪之丞にすすめる...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...夜寒げに絶えずうめける...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...…………一方は秀鶴頭巾(しゅうかくずきん)に夜寒と人目をさけつつ...
吉川英治 「江戸三国志」
...誰も彼も急に口をつぐんで夜寒(よさむ)の壁を見まわした...
吉川英治 「源頼朝」
...夜寒を喞(かこ)ち顔でいるなど...
吉川英治 「宮本武蔵」
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