...往来には厨(くりや)の煙とも夕靄(ゆうもや)ともつかぬ薄い霧がただよって...
有島武郎 「或る女」
...その崕(がけ)下の民家からは炊煙が夕靄(ゆうもや)と一緒になって海のほうにたなびいていた...
有島武郎 「或る女」
...遠山(とおやま)の形が夕靄(ゆうもや)とともに近づいて...
泉鏡花 「雨ばけ」
...雨と夕靄のなかに紅葉のいろを流している裏山を眺めていたが...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...熱海のまちは夕靄(ゆうもや)につつまれ...
太宰治 「秋風記」
...そうして、夕靄(もや)は、ピンク色...
太宰治 「女生徒」
...夕靄がもやもや烟つてふたりのからだのまはりを包み...
太宰治 「ダス・ゲマイネ」
...夕靄(ゆうもや)の中に瞬(またた)き出した市街の灯と同時に...
橘外男 「グリュックスブルグ王室異聞」
...模糊(もこ)たる夕靄(ゆうもや)の中に点々と眼に入りました...
橘外男 「墓が呼んでいる」
...奇(く)しき因縁(いんねん)に纏(まと)われた二人の師弟は夕靄(ゆうもや)の底に大ビルディングが数知れず屹立(きつりつ)する東洋一の工業都市を見下しながら...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...沖の方から夕靄(ゆうもや)の帳(とばり)を透(とお)して陸の灯影を眺めると...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...夕靄(ゆうもや)の深く鎖(とざ)した大海原(おおうなばら)を...
寺島柾史 「怪奇人造島」
...……頼むぜ」「わかっております」たちかけた夕靄の中へ...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...夕靄の中に光つた...
牧野信一 「鱗雲」
...颯つと私達を追ひ越して夕靄を衝いて行つた...
牧野信一 「剥製」
...シヤン/\と鳴る鈴の音に面白く脚なみを合せて夕靄の漂ふた田甫道を駆けた...
牧野信一 「武者窓日記」
...夕靄(ゆうもや)がこめている...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...と親馬も又立ち止つて長く嘶き互に嘶き合つて一つ/\夕靄の中に消えて行く...
吉江喬松 「山岳美觀」
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