...樹間(こま)に仄(ほの)めく夕月(ゆふづき)の夢見(ゆめみ)ごこちの流盻(ながしめ)や...
薄田淳介 「白羊宮」
...夕月の光が雲の間から漏れていた...
田中貢太郎 「白い花赤い茎」
...夏のことで、夕月が射して、庭の泉水では蛙が啼いていた、拙者は何時の間にか庭におりて、そこらあたりを逍遙(そぞろあるき)しておって、何の気なしに、ふと己の居間のほうを見ると、壮い(きれい)な女子(おなご)がいて、寝床の蚊帳を釣っておる、其の繊細(きゃしゃ)な白い手が、行灯の光に浮彫のようになって見えると、拙者は夢のような気になって、ふらふらと居間へあがって往ったのじゃ、其の女子は数日前に雇入れた召使であったが、拙者にはまだ定(きま)った妻もなかったから、其の夜から其の女子(おなご)を可愛がるようになったが、拙者は其のことを直ぐ後悔するようになった...
田中貢太郎 「人面瘡物語」
...何時(いつ)の間にか日が暮れて夕月が射(さ)していた...
田中貢太郎 「牡丹燈籠 牡丹燈記」
...家をさがすや山ほとゝぎす月草いちめん三味線習うてゐる・ばたり落ちてきて虫が考へてゐる・旅のつかれの夕月がほつかり(改作再録)六月三日 同前...
種田山頭火 「行乞記」
...霜がふる白い道・ふけて炊かねばならない煙がさむい・枯野まつすぐにくる犬の尾をふつて・そこらに大根ぶらさげることも我が家らしく・遠い道の轍のあとの凍つてゐる・たま/\来てくれて夕月のある空も(再録)二月四日立春...
種田山頭火 「其中日記」
...「すさまじき女」と「夕月夜岡(おか)の萱根(かやね)の御廟(ごびょう)」...
寺田寅彦 「連句雑俎」
...真黒い森の背(うしろ)ぽうっと東雲(しののめ)に上る夕月...
徳冨蘆花 「漁師の娘」
...夕月榛の木原に上りて...
萩原朔太郎 「花あやめ」
...金十郎は子供の帰りを案じる子煩悩の父親のように長屋の門で夕月の出るまで待ち暮らしてから...
久生十蘭 「奥の海」
...大町の辻読経をば二階にて聞く鎌倉の夕月夜かな大町の辻読経といふことが別にあるのかも知れないが...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...鎌倉は爽やかな初夏の夕月夜だ...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...夕月を銀の匙かと見て思ふ我が脣も知るもののごと夕月を銀の匙と迄は或は感じ得るかも知れない...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...その上に夕月が掛つた...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...森に降る夕月の色我が踏みて木の実の割るゝ味気なき音これは珍しく押韻の歌があつた...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...そのずっと向うの半ば傾いた西の対の上にちょうど夕月のかかっているのが...
堀辰雄 「曠野」
...夕月はいつか五剣山の上に高い...
吉川英治 「随筆 新平家」
...裂けたる鬼女の口に似ている夕月が...
吉川英治 「宮本武蔵」
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