...女子供や隠居老人などが、らちもなき手真似をやって居るものは、固より数限りなくある、乍併之れらが到底、真の茶趣味を談ずるに足らぬは云うまでもない、それで世間一般から、茶の湯というものが、どういうことに思われて居るかと察するに、一は茶の湯というものは、貴族的のもので到底一般社会の遊事にはならぬというのと、一は茶事などというものは、頗る変哲なもの、殊更に形式的なもので、要するに非常識的のものであるとなせる等である、固より茶の湯の真趣味を寸分だも知らざる社会の臆断である、そうかと思えば世界大博覧会などのある時には、日本の古代美術品と云えば真先に茶器が持出される、巴理博覧会シカゴ博覧会にも皆茶室まで出品されて居る、其外内地で何か美術に関する展覧会などがあれば、某公某伯の蔵品必ず茶器が其一部を占めている位で、東洋の美術国という日本の古美術品も其実三分の一は茶器である、然るにも係らず、徒に茶器を骨董的に弄ぶものはあっても、真に茶を楽む人の少ないは実に残念でならぬ、上流社会腐敗の声は、何時になったらば消えるであろうか、金銭を弄び下等の淫楽に耽るの外、被服頭髪の流行等極めて浅薄なる娯楽に目も又足らざるの観あるは、誠に嘆しき次第である、それに換うるにこれを以てせば、いかばかり家庭の品位を高め趣味的の娯楽が深からんに、躁狂卑俗蕩々として風を為せる、徒に華族と称し大臣と称す、彼等の趣味程度を見よ、焉ぞ華族たり大臣たる品位あらむだ...
伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
...そのできあがったところも変哲のない世の普通のプディングにすぎない...
谷譲次 「字で書いた漫画」
...何の変哲(へんてつ)もない土気色を帯び...
谷崎潤一郎 「蘿洞先生」
...書き物机は何の変哲もない窓に向かって置かれ...
三上於菟吉訳 大久保ゆう改訳 「踊る人形」
...そうして無数の人間がなんの変哲もなく...
永井隆 「長崎の鐘」
...我輩も時には禅坊主みたような変哲学者のような悟りすました事も云って見るが...
夏目漱石 「倫敦消息」
...房枝の生活には何の変哲も見られませんでした...
西尾正 「陳情書」
...お刺身にバタを塗って喰べるような変哲もないものになって...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...何んの変哲もなく...
野村胡堂 「死の予告」
...あとは出雲屋の手代佐吉、町内の者二三人、これはいずれも不断着のままで、何の変哲もなく、馬道を出たのも一緒ですから、疑う余地は少しもありません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...これも何の変哲もありません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の変哲もありませんよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の変哲もない場所で...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...まこと変哲のなさの至りである...
牧野信一 「断酒片」
...……ほんとに変哲もねえ...
山本周五郎 「似而非物語」
...なんの変哲もあり得ませんから...
吉川英治 「江戸三国志」
...越前守は、平日どおり、奉行所に出仕し、白洲の訴訟を聴き、市政万般の公事(くじ)を裁決して、変哲もない、平凡な忙(せわ)しい日を送っていた...
吉川英治 「大岡越前」
...武勇一点ばりで変哲もない男かと多年思っていたが...
吉川英治 「三国志」
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