...次第に普遍的自我の光を増し行くことである...
阿部次郎 「三太郎の日記 第三」
...この姉を信じきってくれている……そう思うと葉子は前にも増した愛着をこの病児にだけは感じないでいられなかった...
有島武郎 「或る女」
...まことに何かと我身にひいてのみ申したようでございますし、増して、言わずもがなの極めてやさしいそして極めて些細なことでお笑草になることとは存じますが、何事によらず近頃のことを見るにつけ聞くにつけ、やはりその始め充分な用意と順序がなく、ただ一時の思いつきとか感情とかで始めたからのことではないかと思いますにつれ、こうしたことも、近頃一入感じている次第でございます...
上村松園 「昔尊く」
...数を増してくるのであった...
海野十三 「火星探険」
...空もいつか藍色を増して暗く...
大下藤次郎 「白峰の麓」
...御殿場(ごてんば)にて乗客更に増したる窮屈さ...
寺田寅彦 「東上記」
...これから熱が出ず食慾が増してゆけばもう大丈夫なんです...
豊島与志雄 「生あらば」
...わしが眼で見れば日増しに術が堕ちてゆく...
中里介山 「大菩薩峠」
...旅行の面白味が増して...
長塚節 「旅行に就いて」
...深さはさほど増したとも思えなかった...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...谷川は少しく落差を増して赤法華の附近とは違ひ...
沼井鐵太郎 「黒岩山を探る」
...日は暮れ、雨さへも降り出したので、寒さは又増した...
葉山嘉樹 「氷雨」
...不善の輩(はい)もしたがって増し...
福沢諭吉 「中津留別の書」
...下瞼のたるみが増して...
矢田津世子 「神楽坂」
...「水嵩(みずかさ)は増して来るばかりだ...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...」見れば見るほど増して来る小舟の数を見詰めながら...
横光利一 「旅愁」
...忠房の心にはそれにも増したものがある...
吉川英治 「剣難女難」
...――鷲津、丸根の二砦(ふたとりで)、今は、兵を挙げて、寺部の大事と、駈け行きました」そのことばが終ると同時に、山間に点々と燃えいぶりだした松明(たいまつ)が、二十、三十、五十と増して、そこらの山肌を赤く染めだした...
吉川英治 「新書太閤記」
便利!手書き漢字入力検索