例文・使い方一覧でみる「哄」の意味


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...笑(こうしょう)し...   哄笑しの読み方
ワシントン・アーヴィング Washington Irving 吉田甲子太郎訳 「スリーピー・ホローの伝説」

...――実際その笑(こうしょう)の声は...   ――実際その哄笑の声はの読み方
芥川龍之介 「将軍」

...そして満足気に笑し...   そして満足気に哄笑しの読み方
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」

...無気味な笑のする方を注視した...   無気味な哄笑のする方を注視したの読み方
海野十三 「恐怖の口笛」

...笑(こうしょう)に恐怖をふきとばし...   哄笑に恐怖をふきとばしの読み方
海野十三 「国際殺人団の崩壊」

...その笑は、露骨というにはあまりに皮肉すぎる...   その哄笑は、露骨というにはあまりに皮肉すぎるの読み方
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」

...外のこの大衆の笑の二つとも...   外のこの大衆の哄笑の二つともの読み方
中井正一 「脱出と回帰」

...見物人一同が(どっ)と吹き出しました...   見物人一同が哄と吹き出しましたの読み方
中里介山 「大菩薩峠」

...ふき上げるような庄吉の笑(わらい)だった...   ふき上げるような庄吉の哄笑だったの読み方
林不忘 「あの顔」

...傍の女を顧みて仰山に笑した...   傍の女を顧みて仰山に哄笑したの読み方
牧野信一 「父を売る子」

...事更に声を挙げて馬鹿/\しさうに笑してゐた...   事更に声を挙げて馬鹿/\しさうに哄笑してゐたの読み方
牧野信一 「南風譜」

...すぐ然として笑う男だつた...   すぐ哄然として笑う男だつたの読み方
室生犀星 「洋灯はくらいか明るいか」

...息を 殺せ息を ころせいきを ころせあかんぼが 空を みるああ 空を みる白い枝白い 枝ほそく 痛い 枝わたしのこころに白い えだ哀しみの火矢(ひや)はつあきの よるを つらぬくかなしみの 火矢こそするどくわづかに 銀色にひらめいてつんざいてゆくそれにいくらのせようと あせつたとてこの わたしのおもたいこころだものああ どうしてそんな うれしいことが できるだらうか朗(ほが)らかな 日いづくにかものの落つる ごとし音も なくしきりにも おつらしフヱアリの 国夕ぐれ夏のしげみを ゆくひとこそしづかなる しげみのはるかなる奥に フヱアリの 国をかんずるおほぞらの こころわたしよ わたしよ白鳥となりらんらんと 透きとほつておほぞらを かけりおほぞらの うるわしいこころに ながれよう植木屋あかるい 日だ窓のそとをみよ たかいところで植木屋が ひねもすはたらくあつい 日だ用もないのにわたしのこころで朝から 刈りつづけてゐるのは いつたいたれだふるさとの 山ふるさとの山のなかに うづくまつたときさやかにも 私の悔いは もえましたあまりにうつくしい それの ほのほにしばし わたしはこしかたの あやまちを 讃むるようなきもちになつたしづかな 画家だれでも みてゐるな、わたしは ひとりぼつちで描くのだ、これは ひろい空 しづかな空、わたしのハイ・ロマンスを この空へ 描いてやらううつくしいものわたしみづからのなかでもいいわたしの外の せかいでも いいどこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのかそれが 敵であつても かまわない及びがたくても よいただ在るといふことが 分りさへすれば、ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ一群のぶよいち群のぶよが 舞ふ 秋の落日(ああ わたしも いけないんだ他人(ひと)も いけないんだ)まやまやまやとぶよが くるめく(吐息ばかりして くらすわたしなら死んぢまつたほうが いいのかしら)鉛と ちようちよ鉛(なまり)のなかをちようちよが とんでゆく花になりたいえんぜるになりたい花になりたい無造作な 雲無造作な くも、あのくものあたりへ 死にたい大和行大和(やまと)の国の水は こころのようにながれはるばると 紀伊とのさかひの山山のつらなり、ああ黄金(きん)のほそいいとにひかつて秋のこころが ふりそそぎますさとうきびの一片をかじるきたない子が築地(ついぢ)からひよつくりとびだすのもうつくしい、このちさく赤い花も うれしくしんみりと むねへしみてゆきますけふはからりと 天気もいいんだしわけもなく わたしは童話の世界をゆく、日は うららうららと わづかに白い雲が わきみかん畑には 少年の日の夢が ねむる皇陵や、また みささぎのうへの しづかな雲や追憶は はてしなく うつくしくうまれ、志幾(しき)の宮の舞殿(まひでん)にゆかをならして そでをふる白衣(びやくえ)の神女(みこ)は くちびるが紅(あか)い咲く心うれしきはこころ 咲きいづる日なり秋、山にむかひて うれひあればわがこころ 花と咲くなり劒(つるぎ)を持つ者つるぎを もつものが ゐる、とつぜん、わたしは わたしのまわりにそのものを するどく 感ずるつるぎは しづかでありつるぎを もつ人(ひと)は しづかであるすべて ほのほのごとく しづかであるやるかなんどき 斬りこんでくるかわからぬのだ壺(つぼ)のような日壺のような日 こんな日宇宙の こころは彫(きざ)みたい!といふ 衝動にもだへたであらうこんな 日「かすかに ほそい声」の主(ぬし)は光を 暗を そして またきざみぬしみづからに似た こころをしづかに つよく きざんだにちがひあるまい、けふは また なんといふ壺のような 日なんだらうつかれたる 心あかき 霜月の葉を窓よりみる日 旅を おもふかくのごときは じつに心おごれるに似たれどまことはこころ あまりにも つかれたるゆえなりかなしみこのかなしみをひとつに統(す)ぶる力(ちから)はないか美しい 夢やぶれたこの 窓からゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよるひさしぶりに 美しい夢をみた心 よほのかにも いろづいてゆく こころわれながら あいらしいこころよながれ ゆくものよさあ それならば ゆくがいい「役立たぬもの」にあくがれて はてしなくまぼろしを 追ふて かぎりなくこころときめいて かけりゆけよ死と珠(たま)死 と 珠 とまた おもふべき 今日が きたひびく たましいことさらかつぜんとして 秋がゆふぐれをひろげるころたましいは 街を ひたはしりにはしりぬいて西へ 西へと うちひびいてゆく空を指(さ)す梢(こずゑ)そらを 指す木は かなしそが ほそきこずゑの傷(いた)さ赤ん坊が わらふ赤んぼが わらふあかんぼが わらふわたしだつて わらふあかんぼが わらふ花と咲け鳴く 蟲よ、花 と 咲 け地 に おつるこの秋陽(あきび)、花 と 咲 け、ああ さやかにもこの こころ、咲けよ 花と 咲けよ甕(かめ)甕 を いくつしみたいこの日 ああ甕よ、こころのしづけさにうかぶ その甕なんにもないおまへの うつろよ甕よ、わたしの むねは『甕よ!』と おまへを よびながらあやしくも ふるへる心 よこころよでは いつておいでしかしまた もどつておいでねやつぱりここが いいのだにこころよでは 行つておいで玉(たま)わたしは玉に ならうかしらわたしには何(なん)にも 玉にすることはできまいゆえこころの海(うな)づら照らされし こころの海(うな)づらしづみゆくは なにの 夕陽しらみゆく ああ その 帆かげ日は うすれゆけど明けてゆく 白き ふなうた貫(つら)ぬく 光はじめに ひかりがありましたひかりは 哀しかつたのですひかりはありと あらゆるものをつらぬいて ながれましたあらゆるものに息(いき)を あたへましたにんげんのこころもひかりのなかに うまれましたいつまでも いつまでもかなしかれと祝福(いわわ)れながら秋の かなしみわがこころそこの そこよりわらひたきあきの かなしみあきくればかなしみのみなも おかしくかくも なやましみみと めとはなと くちいちめんにくすぐる あきのかなしみ泪(なみだ)泪(なみだ)、泪(なみだ)ちららしいなみだの 出あひがしらにもの 寂びた(わらひ)がふつと なみだを さらつていつたぞ石くれ石くれを ひろつてと視、こう視哭(な)くばかりひとつの いしくれを みつめてありしややありてこころ躍(おど)れりされどやがて こころ おどらずなれり竜舌蘭りゆうぜつらん のあをじろき はだえに 湧くきわまりも あらぬみづ色の 寂びの ひびきかなしみの ほのほのごとくさぶしさのほのほの ごとくりゆうぜつらんの しづけさは豁然(かつぜん)たる 大空を仰(あふ)ぎたちたり矜持ある 風景矜持ある 風景いつしらずわが こころに 住む浪(らう)、浪、浪 として しづかなり静寂は怒る静 寂 は 怒 る、みよ、蒼穹の怒(いきどほ)りを悩ましき 外景すとうぶを みつめてあればすとうぶをたたき切つてみたくなるぐわらぐわらとたぎるこの すとうぶの 怪! 寂!ほそい がらすほそいがらすがぴいん とわれました葉葉よ、しんしん と冬日がむしばんでゆく、おまへも葉と 現ずるまではいらいらと さぶしかつたらうな葉よ、葉と 現じたるこの日 おまへの 崇厳でも、葉よいままでは さぶしかつたらうな彫られた 空彫られた 空の しづけさ無辺際の ちからづよい その木地にひたり! と あてられたるさやかにも 一刀の跡しづけさある日もえさかる ほのほに みいでしきわまりも あらぬ しづけさある日憎しみ もだえなげきと かなしみの おもわにみいでし水の それのごとき 静けさ夾竹桃おほぞらのもとに 死ぬるはつ夏の こころ ああ ただひとりきようちくとうの くれなゐがはつなつのこころに しみてゆくおもひでおもひでは琥珀(オパール)のましづかに きれいなゆめさんらんとふる嗟嘆(さたん)でさへ金色(きん)の 葉の おごそかにああ、こころ うれしい 煉獄の かげ人の子は たゆたひながらうらぶれながらもだゆる日 もだゆるについできわまりしらぬ ケーオスのしじまへ廓寥と 彫られて 燃え焔々と たちのぼる したしい風景哀しみの海哀しみのうなばら かけりわが玉 われはうみに なげたり浪よわが玉 かへさじとや雲くものある日くもは かなしいくもの ない日そらは さびしい在る日の こころある日の こころ山となりある日の こころ空となりある日の こころわたしと なりて さぶし幼い日おさない日は水が もの云ふ日木が そだてばそだつひびきが きこゆる日痴寂な手痴寂(ちせき)な手 その手だ、こころを むしばみ眸(め)を むしばみ山を むしばみ 木と草を むしばむ痴寂な手 石くれを むしばみ飯を むしばみ かつをぶしを むしばみああ、ねずみの糞(ふん)さへ むしばんでゆくわたしを、小(ち)さい 妻をしづかなる空を 白い雲を痴寂な手 おまへは むさぼり むしばむおお、おろかしい 寂寥の手おまへは、まあじぶんの手をさへ 喰つて しまふのかえくちばしの黄な 黒い鳥くちばしの 黄いろいまつ黒い 鳥であつたつけねちねち うすら白い どぶのうへに籠(かご)のなかで ぎやうつ! とないてゐたつけ、なにかしら ほそいほそいものがピンと すすり哭(な)いてゐるようなそんな 真昼で あつたつけ何故に 色があるのかなぜに 色があるのだらうかむかし、混沌は さぶし かつた虚無は 飢えてきたのだある日、虚無の胸のかげの一抹(いちまつ)がすうつと蠱惑(アムブロウジアル)の 翡翠に ながれたやがて、ねぐるしい ある夜の盗汗(ねあせ)が四月の雨にあらわれて青(ブルウ)に ながれた白き響さく、と 食へばさく、と くわるる この 林檎の 白き肉なにゆえの このあわただしさぞそそくさとくひければわが 鼻先きに ぬれし汁(つゆ)ああ、りんごの 白きにくにただよふまさびしく 白きひびき丘を よぢる丘を よぢ 丘に たてばこころ わづかに なぐさむに似るさりながら丘にたちて ただひとり水をうらやみ 空をうらやみ大木(たいぼく)を うらやみて おりてきたれるおもたい かなしみおもたい かなしみが さえわたるときさやかにも かなしみは ちからみよ、かなしみの つらぬくちからかなしみは よろこびを怒り、なげきをも つらぬいて もえさかるかなしみこそすみわたりたるすだまとも 生くるか胡蝶へんぽんと ひるがへり かけり胡蝶は そらに まひのぼるゆくてさだめし ゆえならずゆくて かがやく ゆえならずただひたすらに かけりゆくああ ましろき 胡蝶みずや みずや ああ かけりゆくゆくてもしらず とももあらずひとすぢに ひとすぢにあくがれの ほそくふるふ 銀糸をあへぐおほぞらの 水おほぞらを 水 ながれたりみづのこころに うかびしはかぢもなき 銀の小舟(おぶね)、ああながれゆく みづの さやけさうかびたる ふねのしづけさそらの はるけさこころそらの はるけさを かけりゆけば豁然と ものありて 湧くにも 似たりああ こころは かきわけのぼるしづけき くりすたらいんの 高原霧が ふる霧が ふるきりが ふるあさが しづもるきりがふる空が凝視(み)てゐる空が凝視(み)てゐるああ おほぞらが わたしを みつめてゐるおそろしく むねおどるかなしい 瞳ひとみ! ひとみ!ひろやかな ひとみ、ふかぶかとかぎりない ひとみのうなばらああ、その つよさまさびしさ さやけさこころ 暗き日やまぶきの 花つばきのはなこころくらきけふ しきりにみたしやまぶきのはなつばきのはな蒼白い きりぎし蒼白い きりぎしをゆくその きりぎしの あやうさはひとの子の あやうさに似る、まぼろしは暴風(はやて)めく黄に 病みて むしばまれゆく 薫香悩ましいまあぶるの しづけさたひらかな そのしずけさの おもわにあまりにもつよく うつりてなげく悔恨の 白い おもひでみよ、悔いを むしばむその 悔いのおぞましさ聖栄のひろやかさよおお 人の子よおまへは それを はぢらうのか夜の薔薇(そうび)ああはるかよるの薔薇わが児(こ)わが児とすなを もり砂を くづし浜に あそぶつかれたれどかなし けれどうれひなき はつあきのひるさがりつばねの 穂ふるへるのかそんなに 白つぽく、さこれはつばねの ほうけた 穂ほうけた 穂なのかいわたしぢや なかつたのか、え人を 殺さばぐさり! とやつて みたし人を ころさばこころよからん水に 嘆くみづに なげく ゆふべなみもすすり 哭く、あわれ そがながき 髪砂に まつわるわが ひくく うたへばしづむ 陽いたいたしく ながる手 ふれなば血 ながれんきみ むねを やむきみが唇(くち)いとど 哀しからんきみが まみうちふるわんみなと、ふえ とほ鳴ればかなしき 港茅渟(ちぬ)の みづとも なりて、あれとぶは なぞ、魚か、さあれしづけき うみわが もだせばみづ 満々と みちくあまりにさぶし蝕む 祈りうちけぶるおもひでの 瓔珞悔いか なげきか うれひかおお、きららしいかなしみの すだまぴらる ぴらるゆうらめく むねの 妖玉さなり さなり死も なぐさまぬらんらんと むしばむ いのり哀しみの 秋わが 哀しみの 秋に似たるはみにくき まなこ病む 四十女のべつとりと いやにながい あご昨夜みた夢、このじぶんに『腹切れ』と刀つきつけし 西郷隆盛の顔猫の奴めが よるのまにわが 庭すみに へどしてゆきし白魚(しらうを)の なまぬるき 銀のひかり静かな 焔各(ひと)つの 木に各(ひと)つの 影木 はしづかな ほのほ石塊(いしくれ)と 語る石くれと かたるわがこころかなしむべかりむなしきと かたる、かくて 厭くなきわが こころしづかに いかる大木(たいぼく)を たたくふがいなさに ふがいなさに大木をたたくのだ、なんにも わかりやしない ああこのわたしの いやに安物のぎやまんみたいな『真理よ 出てこいよ出てきてくれよ』わたしは 木を たたくのだわたしは さびしいなあ稲妻くらい よる、ひとりで 稲妻をみたそして いそいで ペンをとつたわたしのうちにもいなづまに似た ひらめきがあるとおもつたので、しかし だめでしたわたしは たまらなく歯をくひしばつて つつぷしてしまつたしのだけこの しのだけほそく のびたなぜ ほそいほそいから わたしのむねが 痛いむなしさの 空むなしさの ふかいそらへほがらかにうまれ 湧く詩(ポヱジイ)のこころ旋律は 水のように ながれあらゆるものがそこにをわる ああ しづけさこころの 船出しづか しづか 真珠の空ああ ましろき こころのたびうなそこをひとりゆけばこころのいろは かぎりなくただ こころのいろにながれたりああしろく ただしろくはてしなく ふなでをするわが身を おほふ 真珠の そら朝の あやうさすずめが とぶいちじるしい あやうさはれわたりたるこの あさの あやうさあめの 日しろい きのこきいろい きのこあめの日しづかな日追憶山のうへにははたけが あつたつけはたけのすみに うづくまつてみたあの 空の 近かつたことおそろしかつたこと草の 実実(み)!ひとつぶの あさがほの 実さぶしいだらうな、実よあ おまへは わたしぢやなかつたのかえ暗光ちさい 童女がぬかるみばたで くびをまわす灰色の午后の 暗光止まつた ウオツチ止まつた懐中時計(ウオツチ)、ほそい 三つの 針、白い 夜だのに丸いかほの おまへの うつろ、うごけ うごけうごかぬ おまへがこわい鳩が飛ぶあき空を はとが とぶ、それでよいそれで いいのだ草に すわるわたしの まちがひだつたわたしのまちがひだつたこうして 草にすわれば それがわかる夜の 空の くらげくらげ くらげくものかかつた 思ひきつた よるの月虹この虹をみる わたしと ちさい妻、やすやすと この虹を讃めうるわたしら二人 けふのさひわひのおほいさ秋秋が くると いふのかなにものとも しれぬけれどすこしづつ そして わづかにいろづいてゆく、わたしのこころがそれよりも もつとひろいもののなかへくづれて ゆくのか黎明れいめいは さんざめいて ながれてゆくやなぎのえだが さらりさらりと なびくときあれほどおもたい わたしの こころでさへなんとはなしに さらさらとながされてゆく不思議をおもふたちまち この雑草の庭に ニンフが舞ひヱンゼルの羽音が きわめてしづかにながれたとて七宝荘厳の天の蓮華が 咲きいでたとてわたしのこころは おどろかない、倦み つかれ さまよへる こころあへぎ もとめ もだへるこころふしぎであらうとも うつくしく咲きいづるならひたすらに わたしも 舞ひたいあをい 水のかげたかい丘にのぼれば内海(ないかい)の水のかげが あをいわたしのこころは はてしなく くづをれかなしくて かなしくて たえられない人間巨人が 生まれたならば人間を みいんな 植物にしてしまうにちがいない皎々とのぼつてゆきたいそれが ことによくすみわたつた日であるならばそして君のこころが あまりにもつよく説きがたく 消しがたく かなしさにうづく日なら君は この阪路(さかみち)をいつまでものぼりつめてあの丘よりも もつともつとたかく皎々と のぼつてゆきたいとは おもわないかキーツに 寄すうつくしい 秋のゆふぐれ恋人の 白い横顔(プロフアイル)―キーツの幻(まぼろし)はらへたまつてゆく かなしみかなしみは しづかに たまつてくるしみじみと そして なみなみとたまりたまつてくる わたしの かなしみはひそかに だが つよく 透きとほつて ゆくこうして わたしは 痴人のごとくさいげんもなく かなしみを たべてゐるいづくへとても ゆくところもないゆえのこりなく かなしみは はらへたまつてゆく怒(いか)れる相(すがた)空が 怒つてゐる木が 怒つてゐるみよ!微笑(ほほえみ)が いかつてゐるではないか寂寥、憂愁、笑、愛慾、ひとつとして 怒つてをらぬものがあるかああ 風景よ、いかれる すがたよ、なにを そんなに待ちくたびれてゐるのか大地から生まれいづる者を待つのか雲に乗つてくる人をぎよう望して止まないのかかすかな像(イメヱジ)山へゆけない日 よく晴れた日むねに わくかすかな像(イメヱジ)秋の日の こころ花が 咲いた秋の日のこころのなかに 花がさいた白い 雲秋の いちじるしさは空の碧(みどり)を つんざいて 横にながれた白い雲だなにを かたつてゐるのかそれはわからないが、りんりんと かなしい しづかな雲だ白い 路白い 路まつすぐな 杉わたしが のぼる、いつまでも のぼりたいなあ感傷赤い 松の幹は 感傷沼と風おもたい沼ですよしづかなかぜ ですよ毛蟲を うづめるまひるけむし を 土にうづめる春も 晩く春も おそくどこともないが大空に 水が わくのか水が ながれるのかなんとはなくまともにはみられぬ こころだ大空に わくのはおもたい水なのかおもひかへるべきである ともおもわれる秋の 壁白き秋の 壁にかれ枝もてえがけばかれ枝よりしづかなるひびき ながるるなり郷愁このひごろあまりにはひとを 憎まずすきとほりゆく郷愁ひえびえと ながるひとつの ながれひとつのながれあるごとし、いづくにか 空にかかりてかる、る、とながるらしき宇宙の 良心宇宙の良心―耶蘇空と光彫(きざ)まれたる空よ光よおもひなき 哀しさはるの日のわづかに わづかに霧(き)れるよくはれし野をあゆむああ おもひなき かなしさよゆくはるの 宵このよひは ゆくはるのよひかなしげな はるのめがみはくさぶえを やさしき唇(くち)へしつかと おさへ うなだれてゐるしづかなる ながれせつに せつにねがへども けふ水を みえねばなぐさまぬ こころおどりてはるのそらにしづかなる ながれを かんずるちいさい ふくろこれは ちいさい ふくろねんねこ おんぶのときせなかに たらす 赤いふくろまつしろな 絹のひもがついてゐますけさはしなやかな 秋ごらんなさい机のうへに 金糸のぬいとりもはいつた 赤いふくろがおいてある哭くな 児よなくな 児よ哭くな 児よこの ちちをみよなきもせぬわらひも せぬ わ怒りかの日の 怒りひとりの いきもののごとくあゆみきたるひかりあるくろき 珠のごとく うしろよりせまつてくる春春は かるく たたずむさくらの みだれさく しづけさの あたりに十四の少女のちさい おくれ毛の あたりに秋よりは ひくい はなやかな そらああ けふにして 春のかなしさを あざやかにみる柳も かるくやなぎも かるく春も かるく赤い山車(だし)には 赤い児がついて青い 山車には 青い児がついて柳もかるくはるもかるくけふの まつりは 花のようだ...   息を 殺せ息を ころせいきを ころせあかんぼが 空を みるああ 空を みる白い枝白い 枝ほそく 痛い 枝わたしのこころに白い えだ哀しみの火矢はつあきの よるを つらぬくかなしみの 火矢こそするどくわづかに 銀色にひらめいてつんざいてゆくそれにいくらのせようと あせつたとてこの わたしのおもたいこころだものああ どうしてそんな うれしいことが できるだらうか朗らかな 日いづくにかものの落つる ごとし音も なくしきりにも おつらしフヱアリの 国夕ぐれ夏のしげみを ゆくひとこそしづかなる しげみのはるかなる奥に フヱアリの 国をかんずるおほぞらの こころわたしよ わたしよ白鳥となりらんらんと 透きとほつておほぞらを かけりおほぞらの うるわしいこころに ながれよう植木屋あかるい 日だ窓のそとをみよ たかいところで植木屋が ひねもすはたらくあつい 日だ用もないのにわたしのこころで朝から 刈りつづけてゐるのは いつたいたれだふるさとの 山ふるさとの山のなかに うづくまつたときさやかにも 私の悔いは もえましたあまりにうつくしい それの ほのほにしばし わたしはこしかたの あやまちを 讃むるようなきもちになつたしづかな 画家だれでも みてゐるな、わたしは ひとりぼつちで描くのだ、これは ひろい空 しづかな空、わたしのハイ・ロマンスを この空へ 描いてやらううつくしいものわたしみづからのなかでもいいわたしの外の せかいでも いいどこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのかそれが 敵であつても かまわない及びがたくても よいただ在るといふことが 分りさへすれば、ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ一群のぶよいち群のぶよが 舞ふ 秋の落日も いけないんだ)まやまやまやとぶよが くるめく鉛と ちようちよ鉛のなかをちようちよが とんでゆく花になりたいえんぜるになりたい花になりたい無造作な 雲無造作な くも、あのくものあたりへ 死にたい大和行大和の国の水は こころのようにながれはるばると 紀伊とのさかひの山山のつらなり、ああ黄金のほそいいとにひかつて秋のこころが ふりそそぎますさとうきびの一片をかじるきたない子が築地からひよつくりとびだすのもうつくしい、このちさく赤い花も うれしくしんみりと むねへしみてゆきますけふはからりと 天気もいいんだしわけもなく わたしは童話の世界をゆく、日は うららうららと わづかに白い雲が わきみかん畑には 少年の日の夢が ねむる皇陵や、また みささぎのうへの しづかな雲や追憶は はてしなく うつくしくうまれ、志幾の宮の舞殿にゆかをならして そでをふる白衣の神女は くちびるが紅い咲く心うれしきはこころ 咲きいづる日なり秋、山にむかひて うれひあればわがこころ 花と咲くなり劒を持つ者つるぎを もつものが ゐる、とつぜん、わたしは わたしのまわりにそのものを するどく 感ずるつるぎは しづかでありつるぎを もつ人は しづかであるすべて ほのほのごとく しづかであるやるかなんどき 斬りこんでくるかわからぬのだ壺のような日壺のような日 こんな日宇宙の こころは彫みたい!といふ 衝動にもだへたであらうこんな 日「かすかに ほそい声」の主は光を 暗を そして またきざみぬしみづからに似た こころをしづかに つよく きざんだにちがひあるまい、けふは また なんといふ壺のような 日なんだらうつかれたる 心あかき 霜月の葉を窓よりみる日 旅を おもふかくのごときは じつに心おごれるに似たれどまことはこころ あまりにも つかれたるゆえなりかなしみこのかなしみをひとつに統ぶる力はないか美しい 夢やぶれたこの 窓からゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよるひさしぶりに 美しい夢をみた心 よほのかにも いろづいてゆく こころわれながら あいらしいこころよながれ ゆくものよさあ それならば ゆくがいい「役立たぬもの」にあくがれて はてしなくまぼろしを 追ふて かぎりなくこころときめいて かけりゆけよ死と珠死 と 珠 とまた おもふべき 今日が きたひびく たましいことさらかつぜんとして 秋がゆふぐれをひろげるころたましいは 街を ひたはしりにはしりぬいて西へ 西へと うちひびいてゆく空を指す梢そらを 指す木は かなしそが ほそきこずゑの傷さ赤ん坊が わらふ赤んぼが わらふあかんぼが わらふわたしだつて わらふあかんぼが わらふ花と咲け鳴く 蟲よ、花 と 咲 け地 に おつるこの秋陽、花 と 咲 け、ああ さやかにもこの こころ、咲けよ 花と 咲けよ甕甕 を いくつしみたいこの日 ああ甕よ、こころのしづけさにうかぶ その甕なんにもないおまへの うつろよ甕よ、わたしの むねは『甕よ!』と おまへを よびながらあやしくも ふるへる心 よこころよでは いつておいでしかしまた もどつておいでねやつぱりここが いいのだにこころよでは 行つておいで玉わたしは玉に ならうかしらわたしには何にも 玉にすることはできまいゆえこころの海づら照らされし こころの海づらしづみゆくは なにの 夕陽しらみゆく ああ その 帆かげ日は うすれゆけど明けてゆく 白き ふなうた貫ぬく 光はじめに ひかりがありましたひかりは 哀しかつたのですひかりはありと あらゆるものをつらぬいて ながれましたあらゆるものに息を あたへましたにんげんのこころもひかりのなかに うまれましたいつまでも いつまでもかなしかれと祝福れながら秋の かなしみわがこころそこの そこよりわらひたきあきの かなしみあきくればかなしみのみなも おかしくかくも なやましみみと めとはなと くちいちめんにくすぐる あきのかなしみ泪泪、泪ちららしいなみだの 出あひがしらにもの 寂びた哄がふつと なみだを さらつていつたぞ石くれ石くれを ひろつてと視、こう視哭くばかりひとつの いしくれを みつめてありしややありてこころ躍れりされどやがて こころ おどらずなれり竜舌蘭りゆうぜつらん のあをじろき はだえに 湧くきわまりも あらぬみづ色の 寂びの ひびきかなしみの ほのほのごとくさぶしさのほのほの ごとくりゆうぜつらんの しづけさは豁然たる 大空を仰ぎたちたり矜持ある 風景矜持ある 風景いつしらずわが こころに 住む浪、浪、浪 として しづかなり静寂は怒る静 寂 は 怒 る、みよ、蒼穹の怒りを悩ましき 外景すとうぶを みつめてあればすとうぶをたたき切つてみたくなるぐわらぐわらとたぎるこの すとうぶの 怪! 寂!ほそい がらすほそいがらすがぴいん とわれました葉葉よ、しんしん と冬日がむしばんでゆく、おまへも葉と 現ずるまではいらいらと さぶしかつたらうな葉よ、葉と 現じたるこの日 おまへの 崇厳でも、葉よいままでは さぶしかつたらうな彫られた 空彫られた 空の しづけさ無辺際の ちからづよい その木地にひたり! と あてられたるさやかにも 一刀の跡しづけさある日もえさかる ほのほに みいでしきわまりも あらぬ しづけさある日憎しみ もだえなげきと かなしみの おもわにみいでし水の それのごとき 静けさ夾竹桃おほぞらのもとに 死ぬるはつ夏の こころ ああ ただひとりきようちくとうの くれなゐがはつなつのこころに しみてゆくおもひでおもひでは琥珀のましづかに きれいなゆめさんらんとふる嗟嘆でさへ金色の 葉の おごそかにああ、こころ うれしい 煉獄の かげ人の子は たゆたひながらうらぶれながらもだゆる日 もだゆるについできわまりしらぬ ケーオスのしじまへ廓寥と 彫られて 燃え焔々と たちのぼる したしい風景哀しみの海哀しみのうなばら かけりわが玉 われはうみに なげたり浪よわが玉 かへさじとや雲くものある日くもは かなしいくもの ない日そらは さびしい在る日の こころある日の こころ山となりある日の こころ空となりある日の こころわたしと なりて さぶし幼い日おさない日は水が もの云ふ日木が そだてばそだつひびきが きこゆる日痴寂な手痴寂な手 その手だ、こころを むしばみ眸を むしばみ山を むしばみ 木と草を むしばむ痴寂な手 石くれを むしばみ飯を むしばみ かつをぶしを むしばみああ、ねずみの糞さへ むしばんでゆくわたしを、小さい 妻をしづかなる空を 白い雲を痴寂な手 おまへは むさぼり むしばむおお、おろかしい 寂寥の手おまへは、まあじぶんの手をさへ 喰つて しまふのかえくちばしの黄な 黒い鳥くちばしの 黄いろいまつ黒い 鳥であつたつけねちねち うすら白い どぶのうへに籠のなかで ぎやうつ! とないてゐたつけ、なにかしら ほそいほそいものがピンと すすり哭いてゐるようなそんな 真昼で あつたつけ何故に 色があるのかなぜに 色があるのだらうかむかし、混沌は さぶし かつた虚無は 飢えてきたのだある日、虚無の胸のかげの一抹がすうつと蠱惑の 翡翠に ながれたやがて、ねぐるしい ある夜の盗汗が四月の雨にあらわれて青に ながれた白き響さく、と 食へばさく、と くわるる この 林檎の 白き肉なにゆえの このあわただしさぞそそくさとくひければわが 鼻先きに ぬれし汁ああ、りんごの 白きにくにただよふまさびしく 白きひびき丘を よぢる丘を よぢ 丘に たてばこころ わづかに なぐさむに似るさりながら丘にたちて ただひとり水をうらやみ 空をうらやみ大木を うらやみて おりてきたれるおもたい かなしみおもたい かなしみが さえわたるときさやかにも かなしみは ちからみよ、かなしみの つらぬくちからかなしみは よろこびを怒り、なげきをも つらぬいて もえさかるかなしみこそすみわたりたるすだまとも 生くるか胡蝶へんぽんと ひるがへり かけり胡蝶は そらに まひのぼるゆくてさだめし ゆえならずゆくて かがやく ゆえならずただひたすらに かけりゆくああ ましろき 胡蝶みずや みずや ああ かけりゆくゆくてもしらず とももあらずひとすぢに ひとすぢにあくがれの ほそくふるふ 銀糸をあへぐおほぞらの 水おほぞらを 水 ながれたりみづのこころに うかびしはかぢもなき 銀の小舟、ああながれゆく みづの さやけさうかびたる ふねのしづけさそらの はるけさこころそらの はるけさを かけりゆけば豁然と ものありて 湧くにも 似たりああ こころは かきわけのぼるしづけき くりすたらいんの 高原霧が ふる霧が ふるきりが ふるあさが しづもるきりがふる空が凝視てゐる空が凝視てゐるああ おほぞらが わたしを みつめてゐるおそろしく むねおどるかなしい 瞳ひとみ! ひとみ!ひろやかな ひとみ、ふかぶかとかぎりない ひとみのうなばらああ、その つよさまさびしさ さやけさこころ 暗き日やまぶきの 花つばきのはなこころくらきけふ しきりにみたしやまぶきのはなつばきのはな蒼白い きりぎし蒼白い きりぎしをゆくその きりぎしの あやうさはひとの子の あやうさに似る、まぼろしは暴風めく黄に 病みて むしばまれゆく 薫香悩ましいまあぶるの しづけさたひらかな そのしずけさの おもわにあまりにもつよく うつりてなげく悔恨の 白い おもひでみよ、悔いを むしばむその 悔いのおぞましさ聖栄のひろやかさよおお 人の子よおまへは それを はぢらうのか夜の薔薇ああはるかよるの薔薇わが児わが児とすなを もり砂を くづし浜に あそぶつかれたれどかなし けれどうれひなき はつあきのひるさがりつばねの 穂ふるへるのかそんなに 白つぽく、さこれはつばねの ほうけた 穂ほうけた 穂なのかいわたしぢや なかつたのか、え人を 殺さばぐさり! とやつて みたし人を ころさばこころよからん水に 嘆くみづに なげく ゆふべなみもすすり 哭く、あわれ そがながき 髪砂に まつわるわが ひくく うたへばしづむ 陽いたいたしく ながる手 ふれなば血 ながれんきみ むねを やむきみが唇いとど 哀しからんきみが まみうちふるわんみなと、ふえ とほ鳴ればかなしき 港茅渟の みづとも なりて、あれとぶは なぞ、魚か、さあれしづけき うみわが もだせばみづ 満々と みちくあまりにさぶし蝕む 祈りうちけぶるおもひでの 瓔珞悔いか なげきか うれひかおお、きららしいかなしみの すだまぴらる ぴらるゆうらめく むねの 妖玉さなり さなり死も なぐさまぬらんらんと むしばむ いのり哀しみの 秋わが 哀しみの 秋に似たるはみにくき まなこ病む 四十女のべつとりと いやにながい あご昨夜みた夢、このじぶんに『腹切れ』と刀つきつけし 西郷隆盛の顔猫の奴めが よるのまにわが 庭すみに へどしてゆきし白魚の なまぬるき 銀のひかり静かな 焔各つの 木に各つの 影木 はしづかな ほのほ石塊と 語る石くれと かたるわがこころかなしむべかりむなしきと かたる、かくて 厭くなきわが こころしづかに いかる大木を たたくふがいなさに ふがいなさに大木をたたくのだ、なんにも わかりやしない ああこのわたしの いやに安物のぎやまんみたいな『真理よ 出てこいよ出てきてくれよ』わたしは 木を たたくのだわたしは さびしいなあ稲妻くらい よる、ひとりで 稲妻をみたそして いそいで ペンをとつたわたしのうちにもいなづまに似た ひらめきがあるとおもつたので、しかし だめでしたわたしは たまらなく歯をくひしばつて つつぷしてしまつたしのだけこの しのだけほそく のびたなぜ ほそいほそいから わたしのむねが 痛いむなしさの 空むなしさの ふかいそらへほがらかにうまれ 湧く詩のこころ旋律は 水のように ながれあらゆるものがそこにをわる ああ しづけさこころの 船出しづか しづか 真珠の空ああ ましろき こころのたびうなそこをひとりゆけばこころのいろは かぎりなくただ こころのいろにながれたりああしろく ただしろくはてしなく ふなでをするわが身を おほふ 真珠の そら朝の あやうさすずめが とぶいちじるしい あやうさはれわたりたるこの あさの あやうさあめの 日しろい きのこきいろい きのこあめの日しづかな日追憶山のうへにははたけが あつたつけはたけのすみに うづくまつてみたあの 空の 近かつたことおそろしかつたこと草の 実実!ひとつぶの あさがほの 実さぶしいだらうな、実よあ おまへは わたしぢやなかつたのかえ暗光ちさい 童女がぬかるみばたで くびをまわす灰色の午后の 暗光止まつた ウオツチ止まつた懐中時計、ほそい 三つの 針、白い 夜だのに丸いかほの おまへの うつろ、うごけ うごけうごかぬ おまへがこわい鳩が飛ぶあき空を はとが とぶ、それでよいそれで いいのだ草に すわるわたしの まちがひだつたわたしのまちがひだつたこうして 草にすわれば それがわかる夜の 空の くらげくらげ くらげくものかかつた 思ひきつた よるの月虹この虹をみる わたしと ちさい妻、やすやすと この虹を讃めうるわたしら二人 けふのさひわひのおほいさ秋秋が くると いふのかなにものとも しれぬけれどすこしづつ そして わづかにいろづいてゆく、わたしのこころがそれよりも もつとひろいもののなかへくづれて ゆくのか黎明れいめいは さんざめいて ながれてゆくやなぎのえだが さらりさらりと なびくときあれほどおもたい わたしの こころでさへなんとはなしに さらさらとながされてゆく不思議をおもふたちまち この雑草の庭に ニンフが舞ひヱンゼルの羽音が きわめてしづかにながれたとて七宝荘厳の天の蓮華が 咲きいでたとてわたしのこころは おどろかない、倦み つかれ さまよへる こころあへぎ もとめ もだへるこころふしぎであらうとも うつくしく咲きいづるならひたすらに わたしも 舞ひたいあをい 水のかげたかい丘にのぼれば内海の水のかげが あをいわたしのこころは はてしなく くづをれかなしくて かなしくて たえられない人間巨人が 生まれたならば人間を みいんな 植物にしてしまうにちがいない皎々とのぼつてゆきたいそれが ことによくすみわたつた日であるならばそして君のこころが あまりにもつよく説きがたく 消しがたく かなしさにうづく日なら君は この阪路をいつまでものぼりつめてあの丘よりも もつともつとたかく皎々と のぼつてゆきたいとは おもわないかキーツに 寄すうつくしい 秋のゆふぐれ恋人の 白い横顔―キーツの幻はらへたまつてゆく かなしみかなしみは しづかに たまつてくるしみじみと そして なみなみとたまりたまつてくる わたしの かなしみはひそかに だが つよく 透きとほつて ゆくこうして わたしは 痴人のごとくさいげんもなく かなしみを たべてゐるいづくへとても ゆくところもないゆえのこりなく かなしみは はらへたまつてゆく怒れる相空が 怒つてゐる木が 怒つてゐるみよ!微笑が いかつてゐるではないか寂寥、憂愁、哄笑、愛慾、ひとつとして 怒つてをらぬものがあるかああ 風景よ、いかれる すがたよ、なにを そんなに待ちくたびれてゐるのか大地から生まれいづる者を待つのか雲に乗つてくる人をぎよう望して止まないのかかすかな像山へゆけない日 よく晴れた日むねに わくかすかな像秋の日の こころ花が 咲いた秋の日のこころのなかに 花がさいた白い 雲秋の いちじるしさは空の碧を つんざいて 横にながれた白い雲だなにを かたつてゐるのかそれはわからないが、りんりんと かなしい しづかな雲だ白い 路白い 路まつすぐな 杉わたしが のぼる、いつまでも のぼりたいなあ感傷赤い 松の幹は 感傷沼と風おもたい沼ですよしづかなかぜ ですよ毛蟲を うづめるまひるけむし を 土にうづめる春も 晩く春も おそくどこともないが大空に 水が わくのか水が ながれるのかなんとはなくまともにはみられぬ こころだ大空に わくのはおもたい水なのかおもひかへるべきである ともおもわれる秋の 壁白き秋の 壁にかれ枝もてえがけばかれ枝よりしづかなるひびき ながるるなり郷愁このひごろあまりにはひとを 憎まずすきとほりゆく郷愁ひえびえと ながるひとつの ながれひとつのながれあるごとし、いづくにか 空にかかりてかる、る、とながるらしき宇宙の 良心宇宙の良心―耶蘇空と光彫まれたる空よ光よおもひなき 哀しさはるの日のわづかに わづかに霧れるよくはれし野をあゆむああ おもひなき かなしさよゆくはるの 宵このよひは ゆくはるのよひかなしげな はるのめがみはくさぶえを やさしき唇へしつかと おさへ うなだれてゐるしづかなる ながれせつに せつにねがへども けふ水を みえねばなぐさまぬ こころおどりてはるのそらにしづかなる ながれを かんずるちいさい ふくろこれは ちいさい ふくろねんねこ おんぶのときせなかに たらす 赤いふくろまつしろな 絹のひもがついてゐますけさはしなやかな 秋ごらんなさい机のうへに 金糸のぬいとりもはいつた 赤いふくろがおいてある哭くな 児よなくな 児よ哭くな 児よこの ちちをみよなきもせぬわらひも せぬ わ怒りかの日の 怒りひとりの いきもののごとくあゆみきたるひかりあるくろき 珠のごとく うしろよりせまつてくる春春は かるく たたずむさくらの みだれさく しづけさの あたりに十四の少女のちさい おくれ毛の あたりに秋よりは ひくい はなやかな そらああ けふにして 春のかなしさを あざやかにみる柳も かるくやなぎも かるく春も かるく赤い山車には 赤い児がついて青い 山車には 青い児がついて柳もかるくはるもかるくけふの まつりは 花のようだの読み方
八木重吉 「秋の瞳」

...いつ頃ですか」「……今朝の……九時頃……」ドット言う笑(こうしょう)が爆発した...   いつ頃ですか」「……今朝の……九時頃……」ドット言う哄笑が爆発したの読み方
夢野久作 「少女地獄」

...――この時からナポレオンの奇怪な笑は深夜の部屋の中で人知れず始められた...   ――この時からナポレオンの奇怪な哄笑は深夜の部屋の中で人知れず始められたの読み方
横光利一 「ナポレオンと田虫」

...奇児の笑みたいな調子外れの高笑いに...   奇児の哄笑みたいな調子外れの高笑いにの読み方
吉川英治 「私本太平記」

...笑(こうしょう)を撒(ま)きちらして...   哄笑を撒きちらしての読み方
吉川英治 「新・水滸伝」

...あの気まずい別れぎわの春日の揚言(ようげん)と笑(こうしょう)とが...   あの気まずい別れぎわの春日の揚言と哄笑とがの読み方
蘭郁二郎 「腐った蜉蝣」

「哄」の読みかた

「哄」の書き方・書き順

いろんなフォントで「哄」


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甲金   遅すぎる   見仏  

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