...……ああ、他事(ひとごと)ながらいたわしくて、記すのに筆がふるえる、遥々(はるばる)と故郷(おくに)から引取られて出て来なすっても、不心得な小説孫が、式(かた)のごとき体装(ていたらく)であるから、汽車の中で睡(ねむ)るにもその上へ白髪(しらが)の額を押当てて頂いた、勿体ない、鼠穴のある古葛籠(ふるつづら)を、仏壇のない押入の上段(うわだん)に据えて、上へ、お仏像と先祖代々の位牌(いはい)を飾って、今朝も手向けた一銭(もん)蝋燭(ろうそく)も、三分一が処で、倹約で消(しめ)した、糸心のあと、ちょんぼりと黒いのを背(せな)に、日だけはよく当る、そこで、破足袋(やぶれたび)の継ぎものをしてござった...
泉鏡花 「薄紅梅」
...」「……罰、罰の当った事をおっしゃる! 私は涙が溢(こぼ)れます、勿体ない...
泉鏡花 「婦系図」
...そんな勿体ない事が出来るものぢやないといつてゐる位だから...
薄田泣菫 「硯と殿様」
...「真理」や「婦人問題」を語るには勿体ないやうな美しい唇から...
薄田泣菫 「茶話」
...飲食するには勿体ないやうな日和で...
薄田泣菫 「茶話」
...焼いて棄てるは勿体ない...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...何が気に入らなくつてさ様の事を申のぢや」いはれて猶々涙ごゑで「何の勿体ない...
田澤稲舟 「五大堂」
...思えば勿体ない男……」と奥様は...
中里介山 「大菩薩峠」
...勿体ないのなんのって――」「あわてるな八...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...勿体ない、身に余るお情けを何に包みましょうか...
藤野古白 藤井英男訳 「人柱築島由来」
...……僕は勿体ないとか行儀が悪いとか言うので...
古川緑波 「駄パンその他」
...喫い残しの莨が灰の固りといっしょに惜気もなく打遣られるのをみて爺さんは心底から勿体ないなあ...
矢田津世子 「神楽坂」
...勿体ない感じを受ける...
柳宗悦 「雲石紀行」
...……わけても勿体ない御ことは金丸様...
夢野久作 「名娼満月」
...しかし、水というものは腐敗が速いからね、もし細菌をわかしちゃ、勿体ないし、そうかといって捨てちゃなお悪いし、そこで僕は科学的に考えたのさ...
横光利一 「旅愁」
...お湯におはいり」湯まであるのは勿体ない気がすると...
吉川英治 「江戸三国志」
...引きむしッて……勿体ない……だ...
吉川英治 「親鸞」
...手島の伜(せがれ)が聞きかじって居ったのです』『おふくろは勿体ないが騙しよい...
吉川英治 「梅※[#「風にょう+思」、第4水準2-92-36]の杖」
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