...這入るのなら早く這入って来(こ)う」紺(こん)のあつしをセルの前垂れで合せて...
有島武郎 「カインの末裔」
...一人、前垂れがけの、商家の手代らしい男で、兩眼とも繃帶をされてゐるのに、手も引いて貰はずに、壁をたどり/\して、馴れ切つたやうにさつさと一人で病室の方へ歸つて行くのがあつた...
鈴木三重吉 「赤い鳥」
...前垂れのはしで胡麻を煎(い)つた炮烙(ほうろく)を取り下して...
鈴木三重吉 「桑の実」
...小倉(こくら)の前垂れを懸けて角帯を締めた...
橘外男 「蒲団」
...赤前垂れで模擬店を開いて下さったのも嬉しかった...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...私が行くと襷(たすき)や前垂れやを早やチヤンと揃てあつて...
楢崎龍、川田雪山 「千里駒後日譚」
...やっぱり盲目縞(めくらじま)の(黒無地の木綿)前垂れをしめている...
長谷川時雨 「議事堂炎上」
...いそいで休めた手を前垂れでくるくると拭いてしまうと...
室生犀星 「香爐を盗む」
...母の腰巾着であり前垂れっ子であった私は...
柳田国男 「故郷七十年」
...現八の前垂れを本物のようにして見とう御座います」とお父様に御相談をなさいました...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
...わけてもその現八の前垂れの美しかったこと……それはスッカリ本物の通りの刺繍をお入れになったので……こればかりで一寸四方いくらの値打ちがある...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
...飛白(かすり)の前垂れの上に両手をチャンと重ねて...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
...その上に日に焼けた若い男が前垂れをかけて鳥打を冠って...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...前垂れともモンペとも知れぬ手織縞を裾みじかに着...
吉川英治 「随筆 新平家」
...前垂れの下に、何か持って、狭い路地を、小走りに曲って行く...
吉川英治 「梅里先生行状記」
...前垂れを被(かぶ)せて持って来たのは...
吉川英治 「梅里先生行状記」
...佐渡平、ではやがて近いうちに、貴様の弟忠三郎の仇(かたき)もとってやるぞ」たちまち、前垂れをはずし、縞(しま)の着物をかなぐり捨てると、そこにあった、ぼんてん帯に、仲間法被(ちゅうげんはっぴ)、真鍮(しんちゅう)こじりをうしろに差し込んで、「一走り、行って来る」と、小箱をふところに、裏口から飛び出した...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
...前垂れ角帯の自分の小僧姿がまだ自分のものと思えず...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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