...文人の生涯には彫刻家が刻むべき目ざましい題目がないからである...
ワシントン・アーヴィング Washington Irving 吉田甲子太郎訳 「ウェストミンスター寺院」
...仏(ほとけ)を刻む時ばかりでないと云ふ気がした...
芥川龍之介 「雑筆」
...トントンと魚を刻む男...
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」
...カミン爐の上の置時計の時を刻むチクタクが聞える許り...
石川啄木 「新しい歌の味ひ」
...馬車追(ひき)の老爺は丁度厩の前で乾秣(やた)を刻むところであつた...
石川啄木 「天鵞絨」
...懐中時計の秒を刻む音が...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...それを更に彫刻に刻む時...
高村光太郎 「能の彫刻美」
...ペン・ナイフで端から細かく刻む仕事に没頭していた...
谷譲次 「踊る地平線」
...皮膚が荒れてくる旅をつゞけてゐるすこしばかり買物もして旅の夫婦は石刻む音のしたしくて石刻む朝寒に旅焼けの顔をならべて・片輪同志で仲よい夫婦の旅・ざくりざくり稲刈るのみの・秋晴れの砂をふむよりくづれて鶏(トリ)を叱る声もうそ寒う着いたいそがしう飯たべて子を負うてまた野良へ・木葉落ちる声のひととき・貧乏の子沢山の朝から泣いてゐる・それでよろしい落葉を掃く十月十五日晴...
種田山頭火 「行乞記」
...宛も石塊に彼女の像を刻むがようなものだった...
豊島与志雄 「反抗」
...一刀三礼(いっとうさんらい)の敬虔(けいけん)を以て仏像を刻む人でもあるように...
中里介山 「大菩薩峠」
...下女(げじょ)が俎板(まないた)の上で何か刻む音が台所の方で聞こえた...
夏目漱石 「道草」
...わが草木(さうもく)とならん日にたれかは知らむ敗亡の歴史を墓に刻むべき...
萩原朔太郎 「父の墓に詣でて」
...人参(にんじん)や大根を刻むことが道楽だといって片づけられているが...
林芙美子 「平凡な女」
...挽ききるにしろ、刻むにしろ、どうでも手に負えないというような代物じゃない...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...やがて女の児がつれ去られ泣きつかれた男の児はそのあとへ這い込む九歳のしなやかな日やけ色の手脚をまるめて名もなつかしいおじいさん椅子(グランドファザーチェア)はおだやかに 大きく黄ばんだ朽葉色気持の和むなきじゃくりとミシンの音は夢にとけ入り時計はチクタクを刻むとなりの子供はみんな出払った休日(やすみび)の宵...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...待合室の大時計が秒を刻む音...
三好十郎 「おスミの持参金」
...厩(うまや)の裏には馬糧(まぐさ)を刻む音が静かにして...
吉川英治 「新書太閤記」
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