...津々浦々到る処、同じ漁師の世渡りしながら、南は暖(あたたか)に、北は寒く、一条路(ひとすじみち)にも蔭日向(かげひなた)で、房州も西向(にしむき)の、館山(たてやま)北条とは事かわり、その裏側なる前原、鴨川(かもがわ)、古川、白子(しらこ)、忽戸(ごっと)など、就中(なかんずく)、船幽霊(ふなゆうれい)の千倉が沖、江見和田などの海岸は、風に向いたる白帆の外には一重(ひとえ)の遮るものもない、太平洋の吹通し、人も知ったる荒磯海(ありそうみ)...
泉鏡花 「海異記」
...近来はアイコノクラストが到る処に跋扈(ばっこ)しておるから...
内田魯庵 「明治の文学の開拓者」
...一方には政論家が到る処で演説会を催し自由民権の思想を鼓吹(こすい)する...
大隈重信 「選挙人に与う」
...孟宗竹のほかにも到る処に篠竹が繁茂し...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...陰火は到る処に燃えもすればふうわりふうわりと飛びもした...
田中貢太郎 「鷲」
...関東地震や北伊豆地震のときに崩れ損じたらしい創痕(きずあと)が到る処の山腹に今でもまだ生ま生ましく残っていて何となく痛々しい...
寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
...到る処のホテルの如きも独逸人の経営に係(かゝ)るもの多し...
徳冨蘆花 「馬上三日の記」
...肉桂(にっけい)などの古い闊葉樹(かつようじゅ)が到る処繁ってたので...
中勘助 「独り碁」
...落葉は庭にも街にも到る処に積っている...
永井荷風 「写況雑記」
...到る処に(生活)があった...
葉山嘉樹 「乳色の靄」
...まして此の場合のように到る処に氷山が出没しているとすれば...
牧逸馬 「運命のSOS」
...世界は開いたものとして到る処中心を有する円の如く表象されるように...
三木清 「哲学入門」
...外の病院までが皆(み)なその通りでもあるまいが今の世の病院は随分患者に不親切な方が多いね」と全国到る処この弊(へい)あり...
村井弦斎 「食道楽」
...彼等の所謂私設待合が到る処に殖えた...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...到る処に思い切った時代錯誤や...
夢野久作 「能とは何か」
...到る処に白首(しらくび)の店が...
夢野久作 「爆弾太平記」
...その他到る処にこの気分の発露を見受けられますようで……尤も理由なしに咬み合いは始めませんが...
夢野久作 「鼻の表現」
...到る処で私一人が日本の女を代表しているような待遇を受けるに及んで...
与謝野晶子 「鏡心灯語 抄」
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