...」十二時近い新橋停車場(ステイション)の、まばらな、陰気な構内も、冴返る高調子で、主税を呼懸けたのは、め組の惣助...
泉鏡花 「婦系図」
...いいえ、二人はお座敷へ行っている……こっちはお茶がちだから、お節句だというのに、三人のいつもの部屋で寝ました処、枕許が賑(にぎや)かだから、船底を傾けて見ますとね、枕許を走ってる、長い黒髪の、白いきものが、球に乗って、……くるりと廻ったり、うしろへ反ったり、前へ辷(すべ)ったり、あら、大きな蝶が、いくつも、いくつも雪洞(ぼんぼり)の火を啣(くわ)えて踊る、ちらちら紅い袴(はかま)が、と吃驚(びっくり)すると、お囃子が雛壇で、目だの、鼓の手、笛の口が動くと思うと、ああ、遠い高い処、空の座敷で、イヤアと冴えて、太鼓の掛声、それが聞覚えた、京千代ちい姐(ねえ)...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...・落ちついてどちら眺めても柿ばかり・ゆふべうごくは自分の影か月夜のわが庵をまはつてあるく・月からこぼれて草の葉の雨夕雨小雨そよぐはコスモス・ぬれてかゞやく月の茶の木はわが庵は月夜の柿のたわわなる壺のコスモスもひらきました□しぐれてぬれて待つ人がきたしぐれて冴える月に見おくる月は林にあんたは去んだ十月十一日労(マヽ)れて朝寝...
種田山頭火 「其中日記」
...益々眼が冴えてきた...
豊島与志雄 「子を奪う」
...変に澄みきって冴えていた...
豊島与志雄 「小説中の女」
...冴えきった冷い月の光が...
豊島与志雄 「人間繁栄」
...日の光が冴え冴えしていた...
豊島与志雄 「幻の彼方」
...しかし私の眼はその暗いなかでいよいよ冴(さ)えて来るばかりです...
夏目漱石 「こころ」
...あまり冴(さ)えない...
野村胡堂 「楽聖物語」
...蒼白く冴(さ)えた細面が...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...彼には外界もそれを映すものも冴(さ)えて美しくなった...
原民喜 「秋日記」
...池の岸のアーク灯が煌々と冴え返り...
久生十蘭 「魔都」
...枕をまわして、眠ろうと努力しているうちに、眼が冴えて、眠気がさめてしまった...
久生十蘭 「我が家の楽園」
...外は隈(くま)なく冴(さ)え渡った月夜である...
牧野信一 「吊籠と月光と」
...トニオのある優越――むずかしい物事を口にし得る弁舌の冴えを尊敬していて...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...冴えかえった春寒でペンさんが病気になり...
宮本百合子 「獄中への手紙」
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森川義信 「冬の夜の歌」
...透(す)いてみえる程に月は冴えていた...
吉川英治 「篝火の女」
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