...丁度水蒸気の多い春の始で、たなびいた霞(かすみ)の底からは、遠くの寺の鐘が、ぼうんと、眠むさうに、響いて来る、その鐘の音が、如何にも又のどかで、聞きなれた西洋の寺の鐘のやうに、いやに冴えて、かんと脳天へひびく所がない...
芥川龍之介 「煙草と悪魔」
...隣のT夫人が外から呼ぶので戸をあけて見たら月が墓地に冴えてゐた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第三」
...世に隠れたる山姫(やまひめ)の錦(にしき)を照らす松明(たいまつ)かと冴(さ)ゆ...
泉鏡花 「印度更紗」
...青い瓦斯が昼のやうに冴えてゐる中に...
鈴木三重吉 「桑の実」
...そして冴え七月十九日晴...
種田山頭火 「松山日記」
...月の光が冴えきっていた...
豊島与志雄 「道連」
...非常に頭の冴えた男で...
豊島与志雄 「道連」
...よき練習と行きとどいた技術の「冴え」をもたらすものである...
中井正一 「スポーツの美的要素」
...もし冴えた寒冷の朝か...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...研屋を斬つた腕の冴えは...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...池の汀のアーク灯ばかり徒らに皎々と冴えかえっている...
久生十蘭 「魔都」
...冴(さ)えた目を据えた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
......
三好達治 「短歌集 日まはり」
...その雅致を生み、器の生命を産む面の変化、削(けず)りの跡、筆の走り、刀の冴(さ)え、かかるものをまで、どうして機械が作り得よう...
柳宗悦 「民藝四十年」
...人を馬鹿にしたような月が冴えだした頃...
吉川英治 「剣難女難」
...「む、むウ! そうかッ」鐙(あぶみ)に踏み立って、「者どもッ」眉は、黛(まゆずみ)で描いたように、濃く強く見えるほど、凄まじいその相好(そうごう)の皮膚は、冴えて、血の気も見えなかった...
吉川英治 「新書太閤記」
...まだ夜明けには間がありましょうか」「そちは少しも寝ないようだが」「なんとなく気が冴えて」「それはいけない」「でも...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...自分の剣が最高な冴えを示した時であり...
吉川英治 「宮本武蔵」
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