...一年経って、また冬が来ると、わたしらも寒さ馴れがして、そう寒いとは思わなくなった...
梅崎春生 「狂い凧」
...気持がわるくなって、庭園を歩いていましたが、ふしぎなことにぶつかりました」「ふしぎなことって、それは耳よりな、どうしたのかね」「この庭園には、冬だというのに、蛇が出てくるんですよ」「ああ一件の……いや、二メートルの蛇か」「二メートルもありませんでしたが、頤(あご)のふくれた猛毒をもった蛇です...
海野十三 「大使館の始末機関」
...大地の温みに長い冬の眠から覚めたこの小さな蔬菜は...
薄田泣菫 「独楽園」
...東京と云うところは冬が取り分けしのぎにくいと聞いていましたが一日として名物のから風が吹かぬ日はなく寒に入ってからの寒さはまことに生れて始めてのことにて今朝などは手拭(てぬぐい)が凍って棒のようになりバリバリ音がするのですが...
谷崎潤一郎 「細雪」
...で一冬は少しばかり貯金して置いた金で辛うじて過して行った...
田山花袋 「トコヨゴヨミ」
...幾冬ぶりでしょう!」と彼女はスタールツェフに手をさし伸べながら言ったが...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「イオーヌィチ」
...冬は彼等にとって山狩の季節なのであります...
知里真志保 「アイヌ宗教成立の史的背景」
...冬であれば病院の庭にでも...
津村信夫 「雪」
...貴方が猟(と)ったのですか」と恐る恐るきくと「あれはこの冬のだ...
中谷宇吉郎 「アラスカ通信」
...静寂な冬山をますます静寂にするものは...
中谷宇吉郎 「樹氷の科学」
...此の冬の季節では姿を見せないとのことに...
濱田耕作 「沖繩の旅」
...また今年の冬をやつと越した...
林芙美子 「下町」
...冬の日は既に西方の山の背にはいりかけていた...
堀辰雄 「風立ちぬ」
...して其の冬には、父は心臓に故障のある體をお邸の夜番に出たと聞いたが、其から間もなく由三は、故郷に歸らなければならぬ事になツて、三年ばかり綾さんを見る機會がなかツた...
三島霜川 「昔の女」
...今頃から冬にかけては...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...同人集に従へば、冬嶺、名は(すう)、字(あざな)は山松(さんしよう)であつた...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...冬を自分のとこにひきとめておく力をもってでもいるようです...
セルマ・ラーゲルレーヴ Selma Lagerlof 矢崎源九郎訳 「ニールスのふしぎな旅」
...はや征野の木々にも冬の訪れが見えだしたところへ――朔風(さくふう)にわかにふいて...
吉川英治 「三国志」
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