...且つ夫(そ)れ仙千代と共に随ひ行きし勝千代が父は、彼の秀吉が覚よき石川伯耆守にして、徳川の家中には、兼ねてより、窃(ひそか)に其の二心を疑へる者さへありければ、作左は素より忠侃(ちうかん)一辺の男なれど、当時雑説紛々の折柄、伯耆守と共に子思ひの作左が心底も動かずやと、家中の噂にも上りしことあるべく、疚(やま)しからぬ腹を揣摩(しま)せられて、潔白を傷けんも口惜しと、さてこそ思へば待てぬ作左衛門、急に疑の種をば引き戻すに至りしなるべけれ...
芥川龍之介 「大久保湖州」
...兼ねて黒川先生から依頼されていた心霊学会例会の打合せの用件で...
江戸川乱歩 「悪霊」
...たまり兼ねてわしは昨日警察に委細を届出ました...
江戸川乱歩 「黒手組」
...兼ねて旅の艱を知らしむれば...
大町桂月 「親子遠足の感」
...それを見兼ねて片腕の親方が割って出で...
中里介山 「大菩薩峠」
...演技監督まで一身に兼ねて大がかりな綜合芸術を生んでいるが...
信時潔 「歌詞とその曲」
...堪え兼ねて今日ちょいと覗いて見ますと...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...そんな約束をなすつて」お靜は見兼ねて聲を掛けましたが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...八五郎さん」お静はたまり兼ねて...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...私は親から譲られた土地に離れ兼ねて...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...もう一人の男は見るに見兼ねて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...其用事を兼ねて私は絶えず触れていたが...
二葉亭四迷 「平凡」
...その重みにたえ兼ねて折れたものもあった...
本庄陸男 「石狩川」
...酒場(バア)とホテルを兼ねて...
牧野信一 「南風譜」
...兼ねて社会の問題なのです...
柳宗悦 「民藝とは何か」
...この点は二つを兼ねてゐる神社でも同じことで...
柳田國男 「祭のさまざま」
...出石に滞在している自斎の許へ使者にやった重役溝口伊予(みぞぐちいよ)の帰城を待ち兼ねていた丹後守は...
吉川英治 「剣難女難」
...この事は後になって、岡右衛門等が、久松家(ひさまつけ)へ預けられてから、なぜあの時、穴へ入り兼ねて、主税殿に先(せん)を越されたか――との問いに答えて、(人には、勇と怯(きょう)のべつがあるばかりではなく、同じ勇にも、優劣のちがいがあるものと思われます)と、正直に述懐している...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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