...周囲によつて生きてゐる人間には内心の要求が強い程かの矛盾に苦しむのであるが併しその要求が昂じてそれで一人の人間全体がはり切れさうになりさへすれば周囲のことなどはおもつてはゐられなくなつて仕舞ふに相違ない...
伊藤野枝 「女絵師毒絵具を仰ぐ」
...この部落全体が梅の花で埋まった...
太宰治 「斜陽」
...綺麗に刈りならした芝生の中に立って正に打出されようとする白い球を凝視していると芝生全体が自分をのせて空中に泛(うか)んでいるような気がしてくる...
寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
...もし人類全体が同一の関心を持つならば...
戸坂潤 「現代哲学講話」
...目全体が霞んでしまう...
外村繁 「澪標」
...光線のなかにあるせいか、指全体が、生きてるのか死んでるのか分らず、ただこまかく自在に動き、爪の表面が時々光った...
豊島与志雄 「塩花」
...その全体が、特別な話し方で、真綿に針を包んでいる...
豊島与志雄 「早春」
...芸術全体が、地面を蠢動する蚯蚓みたいになりはしないかを、恐れるのである...
豊島与志雄 「ヒューメーンということに就て」
...船全体が帆柱に引きずり廻されているような形になります...
中里介山 「大菩薩峠」
...家の者全体が、その父親でさえが、腫物(はれもの)にさわるようにあしらっているお銀様という人を、弁信のみが、寛宏(かんこう)な、鷹揚(おうよう)な、そうして、趣味と、教養の、まことに広くして、豊かな、稀れに見る良き女性だと信じ、且つ親しむの念を加えてゆくことができるというのが、不思議です...
中里介山 「大菩薩峠」
...擂鉢の全体が必ず味噌を入れなければならぬと規定すべきものではない...
中里介山 「大菩薩峠」
...単に鼻のみではない、顔全体が低い...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...その場所全体が擂鉢形(すりばちがた)をしている...
平林初之輔 「動物園の一夜」
...我ら江戸っ子全体が「いけない」「できない」「落ちない」と正しく美しい発音を常としていた...
正岡容 「艶色落語講談鑑賞」
...この広大な稲田全体が...
宮本百合子 「青田は果なし」
...ここでは服従すべきものとして人民全体が扱われていたから...
宮本百合子 「明日をつくる力」
...生活全体が変って来れば...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...今では全体が山水だとは分っても...
柳宗悦 「益子の絵土瓶」
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