...其引締つた聲や面もちや、身の取こなし總てがはき/\してゐる事や、太刀作りの如何にもさわやかな若駒のひり/\してゐるさまが、皆能く小室の人柄に似せてゐる事や、對話の際には何もかも覺えがない樣に思うたが、かう一人で考へて見ると、小室其人の俤が、耳朶の下邊に黒子のあつた事まで委しく目に留つてゐるのである...
伊藤左千夫 「古代之少女」
...垣根の外の立迷にも十度に一度も戀人の俤を見ず...
伊藤左千夫 「古代之少女」
...別(わかれ)の手振(てぶり)うれたくもわが俤(おもかげ)は蕭(しめ)やかに辷(すべ)り失(う)せなむ気色(けはひ)にて...
上田敏 上田敏訳 「海潮音」
...女の俤(おもかげ)が忘られないので...
田中貢太郎 「蛇性の婬」
...それにしても今日の大阪は検校が在りし日の俤(おもかげ)をとどめぬまでに変ってしまったがこの二つの墓石のみは今も浅からぬ師弟の契(ちぎ)りを語り合っているように見える...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...今更のように在りし日の母の俤(おもかげ)を偲(しの)び...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...昔の俤(おもかげ)はないのであろうが...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...茅葺(かやぶ)きの家の薄暗い納戸(なんど)にふせる父母の俤(おもかげ)を偲(しの)びつつあったであろう...
谷崎潤一郎 「吉野葛」
...動物愛護を實地に教へてくれた慈母の俤を偲ぶのである...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
......
内藤鳴雪 「鳴雪句集」
...ただ亡児の俤(おもかげ)を思い出(い)ずるにつれて...
西田幾多郎 「我が子の死」
...かたちのいい唇の上にもその俤(おもかげ)がほのぼのと残っている...
久生十蘭 「葡萄蔓の束」
...雲往きて桜の上に塔描けよ恋しき国を俤に見んこれも若い娘の好んで描く幻像あこがれを歌つたものらしく何のこともないが...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...そのような劇しい憎しみを持っている男の俤を伝えている定子が...
宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
...却って軽蔑を押えられない木部の俤を伝えている定子に対する自身の女として堪え難い苦しい感情...
宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
...お母さんはお母さんでやはり俤をそこに認めて一層可愛くお思いになるのでしょう...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...己がこころにある俤(おもかげ)とを見くらべるような目色をした...
室生犀星 「後の日の童子」
...寧ろ子供の心を実母の俤(おもかげ)へつないで置くほうがよいのではないか...
山本周五郎 「日本婦道記」
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