...別(わかれ)の手振(てぶり)うれたくもわが俤(おもかげ)は蕭(しめ)やかに辷(すべ)り失(う)せなむ氣色(けはひ)にて...
上田敏 上田敏訳 「海潮音」
...ここに来てまみえし思ひ翁の忌笠置路(かさぎじ)に俤(おもかげ)描く桃青忌焚火(たきび)するわれも紅葉を一ト握り掛稲の伊賀の盆地を一目の居十一月二十三日 伊賀上野...
高浜虚子 「六百句」
...玉鏡に可憐(かれん)一点の翠黛(すいたい)を描いて湘君(しょうくん)の俤(おもかげ)をしのばしめ...
太宰治 「竹青」
...四季それ/″\の住居を定めて或はパルテノンの俤を模し...
谷崎潤一郎 「金色の死」
...それにしても今日の大阪は検校が在りし日の俤(おもかげ)をとどめぬまでに変ってしまったがこの二つの墓石のみは今も浅からぬ師弟の契(ちぎ)りを語り合っているように見える...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...あの折角の印度更紗(インドさらさ)の窓かけも最早や昔日(せきじつ)の俤(おもかげ)を止(とど)めず煤(すす)けてしまい...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...舊師の俤を偲びつゝ中學校の話から初まつてそれからそれへと聯想をつゞけての思ひ出話に花を咲かせてたのしい事であつた...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...日本に於ては不世出の聖主明治大帝には蔭ながらにも親しく御俤を仰いだことの一度もないのは明治生れの自分として甚だ残念な次第である...
中里介山 「生前身後の事」
...片々(へんぺん)たる落葉(おちば)は廣(ひろ)い區域(くゐき)に悉(ことごと)く其(そ)の俤(おもかげ)をも止(とゞ)めないで消滅(せうめつ)して畢(しま)はねば成(な)らぬのであつた...
長塚節 「土」
...自ら士族だといつて居たがさういふ俤もあつた...
長塚節 「隣室の客」
...併しその一流の境を求める自分はまだその俤(おもかげ)の窺(うかゞ)はれる仕事すらしてをらぬのに...
長與善郎 「青銅の基督」
...もう先刻までの俤(おもかげ)もありません...
野村胡堂 「大江戸黄金狂」
...昔の俤(おもかげ)も無くなりましたが...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...最早名妓といった俤(おもかげ)はありませんが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...……私はむかしのひとの俤を探して歩きました...
久生十蘭 「キャラコさん」
...夏には北方の気候の俤(おもかげ)は更にない...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...忍藻の眼の中には三郎の俤(おもかげ)が第一にあらわれて次に父親の姿があらわれて来る...
山田美妙 「武蔵野」
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