...余裕のない、せつぱつまつた、云はば半(なかば)吹(ふ)き折られた帆桁(ほげた)が、風のすぎた後で、僅に残つてゐる力をたよりに、元の位置に返らうとする、あの止むを得ない「静に」です...
芥川龍之介 「猿」
...かつ事急で理解を与える余裕のない場合は躊躇なく強制的に命令せねばならない...
石原莞爾 「戦争史大観」
...余り余裕のない懐(ふとこ)ろから百何十円を支払って大辞典を買うというは知識に渇する心持の尋常でなかった事が想像される...
内田魯庵 「硯友社の勃興と道程」
...充分に餌を買うだけの余裕のないやりくりではないのか...
梅崎春生 「魚の餌」
...其処は多忙で餅などをこしらえている余裕のないことを知っている老婆は...
田中貢太郎 「地獄の使」
...これは心に余裕のない事を示す...
寺田寅彦 「電車と風呂」
...象をおこらせた人間の行為などはとても考えている余裕のないのが普通であろう...
寺田寅彦 「解かれた象」
...笹村の余裕のない心には...
徳田秋声 「黴」
...* ジャーナリズムの意義に就いて今茲に述べる余裕のないのは残念である...
戸坂潤 「科学論」
...大河内氏流の農村工業化論と「科学主義」工業説とを検討する余裕のないのみ憾みとする)...
戸坂潤 「技術的精神とは何か」
...それをまだ解き捨てる余裕のない創男の兇賊子鉄の頭は...
中里介山 「大菩薩峠」
...落ち込んで動く余裕のない眼...
夏目漱石 「思い出す事など」
...全く余裕のないほど緊張している...
夏目漱石 「行人」
...彼(かれ)は妾(めかけ)を置く余裕のないものに限(かぎ)つて...
夏目漱石 「それから」
...包(つつ)み蔵(かく)す余裕のないうちに...
夏目漱石 「明暗」
...内省の余裕のない限りない活動には懐疑に伴うような憂鬱は随ったが懐疑そのものは含まれていなかった...
三木清 「語られざる哲学」
...明治初年の余裕のない時代に...
柳宗悦 「民藝四十年」
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