...立寄る客なく、通りも途絶えた所在なさに、何心なく、じっと見た若い女房が、遠く向うから、その舌で、頬を触るように思われたので、むずむずして、顔を振ると、短冊が軽く揺れる...
泉鏡花 「薄紅梅」
...何心(なにごころ)となく花園町(はなぞのちょう)を軒別(けんべつ)門札(もんさつ)を見て歩くと忽(たちま)ち見附けた...
内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
...そのおり家康は湯を汲み出そうとして何心なく釜の蓋へ手をやった...
薄田泣菫 「艸木虫魚」
...何心なく出ただけに...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...私は何心なく行って見ると...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...何心なく之を手に取った時...
永井荷風 「百花園」
...何心なくその洋杖を持ったまま自分の室(へや)まで帰って来て...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...あるじ何心なく、おことは何とてかく息つきあへず走り廻はり給ふにや、と問ふに、何事とは嗚呼がまし...
※[#「さんずい+(壥−土へん−厂)」、第3水準1-87-25]上漁史 「土用干ノ記」
...銭形の」何心なく表の入口から顔を出した洲崎の金六は...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何心なく聲を掛けると...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...兄といへるは何心なく積重ねたる反古紙(ほごがみ)を手に取りて見れば...
樋口一葉 「うつせみ」
...何心なく物を言っては高笑(たかわらい)をする...
二葉亭四迷 「浮雲」
...甲板に上り著くと同時に痰(たん)が出たから船端の水の流れて居る処へ何心なく吐くと痰ではなかった...
正岡子規 「病」
...阿園が問いに何心なくさようと答えつ...
宮崎湖処子 「空屋」
...何心なくひろって見たら...
宮本百合子 「「インガ」」
...中将が来て東の渡殿(わたどの)の衝立(ついたて)の上から妻戸の開いた中を何心もなく見ると女房がおおぜいいた...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...「三条の宮から」と言って使いが何心もなく持って来たのを...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...台盤所(だいばんどころ)へ来ておいでになって戸口へお呼びになった宮へ差し上げていたのをちょうどその時中宮の御前から出て来た大将が何心なく横目に見て...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
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