...直芳は何心なく室内を見廻してびっくりした...
江見水蔭 「壁の眼の怪」
...オシハの王が何心なくお馬にお乘りになつて...
稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳 「古事記」
...母は時々、金沢ふみ子さんや、それから、他の娘さんでやっぱり一躍有名になったひとの噂を、よそで聞いて来ては興奮して、和子だって、書けば書けるのにねえ、根気(こんき)が無いからいけません、むかし加賀の千代女が、はじめてお師匠さんのところへ俳句を教わりに行った時、まず、ほととぎすという題で作って見よと言われ、早速さまざま作ってお師匠さんにお見せしたのだが、お師匠さんは、これでよろしいとはおっしゃらなかった、それでね、千代女は一晩ねむらずに考えて、ふと気が附いたら夜が明けていたので、何心なく、ほととぎす、ほととぎすとて明けにけり、と書いてお師匠さんにお見せしたら、千代女でかした! とはじめて褒められたそうじゃないか、何事にも根気が必要です、と言ってお茶を一と口のんで、こんどは低い声で、ほととぎす、ほととぎすとて明けにけり、と呟(つぶや)き、なるほどねえ、うまく作ったものだ、と自分でひとりで感心して居られます...
太宰治 「千代女」
...何心なく寄り込んだは偶然にもかの女夫餅(めおともち)...
中里介山 「大菩薩峠」
...何心なく歩いて来ると...
中里介山 「大菩薩峠」
...何心(なにごゝろ)なしに一番目(ばんめ)のを讀(よ)んで見(み)ると...
夏目漱石 「門」
...やって貰おう」何心なく斯(こ)う申します...
野村胡堂 「禁断の死針」
...何心なく來たのは石原の河岸...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「いやな流行(はや)りものにならなきや宜いが――」ガラツ八は何心なくそんな事を言つて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...何心なく振り返りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...何心(なにごヽろ)なく開(ひ)らきて一(いち)二(に)行(ぎやう)よむとせしが...
樋口一葉 「曉月夜」
...何心なく美登利と見合す目つきの可愛さ...
樋口一葉 「たけくらべ」
...ほんのちょっと身動きをするとか何心なく眉でもしかめようものなら...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...篤介がひょいと活動雑誌から頭を擡(もた)げ何心なく真向いでそうやっている二人を眺めた...
宮本百合子 「明るい海浜」
...朝子は自然の感情から何心なくそういう意味を云ってやった...
「おもかげ」
...或る日いつものやうに何心なく歸つて見ますと...
森林太郎 「高瀬舟」
...即ち書を茶山に与へて曰く使襄禽獣、則可、苟亦人也、則何心処之、亦何面目以見二天下之人一乎と...
山路愛山 「頼襄を論ず」
...だけど兄さんは』とこの小娘は何心なく言つた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
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