...今時分木彫りをわざわざ頼みに来るのは不思議のようであるが...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...今時分女はよその男とどんなことをしているか……」と...
近松秋江 「霜凍る宵」
...今時分あの女は遠くに行ってるだろう...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...少し沢山詰めておいてくれぬか」「今時分から...
直木三十五 「南国太平記」
...丁度去年の今時分初めてここの二階を借りた当時...
永井荷風 「雪解」
...また今時分になって柳橋あたりへ...
中里介山 「大菩薩峠」
...だけれども今時分...
中里介山 「大菩薩峠」
...今時分――日はカンカンと照っているのに...
中里介山 「大菩薩峠」
...三十一そこで弁信が立ちどまっていると、走り来って、ほとんどぶっつかろうとして、危(あや)うく残して避けたその人が、「まあ、あなたは、弁信さんじゃないの」「そういうあなたは、お嬢様でございましたね」「あ、なんだって弁信さん、今時分、こんなところを一人歩きをしているのです」「それは、私から、あなたにお尋ねしたいところなのです、あなたこそ、どうして、今時分、こんなところへ、お一人でおいでになりましたのですか」「エエ、わたしはね……逃げて来たのよ」「火事でございますね」「エエ」「火事は、お屋敷うちには違いございませんが、どなたかのお住居(すまい)ですか、それとも納屋か、厩(うまや)か、土蔵か、物置かでございましたか」「あのね、弁信さん、火事は本宅なのよ」「御本宅――」「エエ、そうして、わたしの屋敷へも移るかも知れない、あの火の色をごらん」「それは大変でございます、それほどの大変に、どうして、あなた様だけがお一人で、こっちの方へ逃げておいでになったのですか、あとのお方には、お怪我はありませんか」「それは知らない、わたしは怖いから、わたしだけが逃げて来ました」そういって、お銀様は立ちどまったままで、後ろを顧みて、竹の藪蔭(やぶかげ)から高くあがる火竜の勢いと、その火の子をながめて、ホッと吐息をついた時、弁信の耳には、それが早鐘(はやがね)のように聞え、その口が、耳までさけているように見えましたものですから、「ああ、お嬢様、あなたは怖ろしいことをなさいましたね」「ええ」「あなたは、いけません、それだから、私が怖れました、ああ、今や、その怖れが本物になりました」「何を言ってるの、弁信さん」「お嬢様、あなたこそ、何を言っていらっしゃるのです」「わたしは何も言ってやしない、ただ、怖いから逃げて来たのよ」「火事が怖ろしいだけではございますまい、あなたのお胸には、良心の怖れがございます」「何ですって」「ああ、あの火事の知らせる早鐘よりも、あなたのお胸の轟(とどろ)きが、私の胸に高く響くのはなにゆえでしょう、あの火事の炎の色は見えませんけれど、あなたの息づかいが、火のように渦を巻いているのが聞えます」「弁信さん、出鱈目(でたらめ)を言ってはいけません、誰だって……誰だって、こんなに急いで来れば動悸(どうき)がするじゃありませんか、そんなことを言うのはよして頂戴、そうでなくってさえ、わたしは怖くてたまらない」「何が、そんなに怖いのでしょう、火事は家を焼き、林を焼くかも知れませんが、人の魂を焼くものではありません」「だって、だって、弁信さん、お前は眼が見えないから、それで怖いものを知らないんでしょう」「怖いのは、火事ではありません、人の心です」「いやなこと言わないようにして下さいよ」「本当のことを言っているのでございます、私には、火事の火の色は見えませんけれども、心の火の色が見えます」「今は、そんなことは言わないで頂戴」「そうして、お嬢様、あなたは、これからどこまでお逃げなさるつもりですか」「そうでしたね、こんなに逃げたって仕方がありませんわね、それがどこまで逃げられるものでしょう」「わたしと一緒にお帰り下さいまし」「まあ、ゆっくりしておいで、あの火事をごらん、まあ、なんて綺麗(きれい)な火の色でしょう」お銀様と、弁信は、もつれるように並んで歩きながら、広い竹藪(たけやぶ)の中の小径(こみち)を通って笹の間から、チラチラと見える火の勢いがようやく盛んなのを前にして、やがて藪を出ると、そこは、だらだら下りの小高いところになっていました...
中里介山 「大菩薩峠」
...ましてこれはここにいる客人のうちで最も若い人ではあり、その若い人が何の用向か知らないが、今時分、たった一人で、こんなところまで踏み込んだのは、よくよくのことでなければならないし、そのよくよくの場合に病みついたなんぞということは、お雪の感傷的な同情深い女性的の半面を呼び起すにもかなり有力です...
中里介山 「大菩薩峠」
...「おいおい、寒い時は山から小僧が飛んで来るものだぜ、今時分、逆に山入りをする小僧があるものか」どこからともない、嘲笑罵声を聞き流して耳を傾けた弁信法師――「おや、私一人ばかりかと思いましたこの道に、うしろからお呼びになったのは、どなたでございます...
中里介山 「大菩薩峠」
...もう今時分から手廻しをするのだと気がついた...
夏目漱石 「門」
...自分はどうして今時分まで運慶が生きているのかなと思った...
夏目漱石 「夢十夜」
...姉 今時分誰か知ら...
新美南吉 「ラムプの夜」
...丁度きのふの今時分...
堀辰雄 「牧歌」
...今時分からそんなものを持つて来やがる!」滝は...
牧野信一 「籔のほとり」
...いつも今時分は内科も隙(ひま)なのを知つてゐるので...
水野仙子 「嘘をつく日」
...『今時分出て行く船もあるまいから...
水野仙子 「夜の浪」
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