...ことに今時分の鎌倉にゐると...
芥川龍之介 「一番気乗のする時」
...――今時分一人で何処へ行きなさる...
泉鏡花 「遺稿」
...『何処を歩いてたの今時分まで』『彼方此方(あちこち)さ』『それで...
伊藤野枝 「惑ひ」
...どこから今時分でてきたのか知らないが...
海野十三 「ネオン横丁殺人事件」
...「今時分、何の音だろう?」硝子窓の方に耳をちかづけてみると、その窓硝子がビビビーンと鳴っているのだった...
海野十三 「○○獣」
...「やあ」と塚本は、手は休めずに眼で頷いたが、日が暮れぬ間に仕事を片附けてしまはうと、畳へきゆツと針を刺し込んでは抜き取りながら、「今時分、何処へ行きはりまんね?」「別に何処へも行かしまへん...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のをんな」
...今時分連れて来て何になると思うのかと叱るので...
徳田秋声 「縮図」
...今時分になって燈火をつけていないということは異例ですから...
中里介山 「大菩薩峠」
...ほどなく権堂(ごんどう)の町へ入るには入ったが、どことて今時分、起きている気紛れはない...
中里介山 「大菩薩峠」
...三十一そこで弁信が立ちどまっていると、走り来って、ほとんどぶっつかろうとして、危(あや)うく残して避けたその人が、「まあ、あなたは、弁信さんじゃないの」「そういうあなたは、お嬢様でございましたね」「あ、なんだって弁信さん、今時分、こんなところを一人歩きをしているのです」「それは、私から、あなたにお尋ねしたいところなのです、あなたこそ、どうして、今時分、こんなところへ、お一人でおいでになりましたのですか」「エエ、わたしはね……逃げて来たのよ」「火事でございますね」「エエ」「火事は、お屋敷うちには違いございませんが、どなたかのお住居(すまい)ですか、それとも納屋か、厩(うまや)か、土蔵か、物置かでございましたか」「あのね、弁信さん、火事は本宅なのよ」「御本宅――」「エエ、そうして、わたしの屋敷へも移るかも知れない、あの火の色をごらん」「それは大変でございます、それほどの大変に、どうして、あなた様だけがお一人で、こっちの方へ逃げておいでになったのですか、あとのお方には、お怪我はありませんか」「それは知らない、わたしは怖いから、わたしだけが逃げて来ました」そういって、お銀様は立ちどまったままで、後ろを顧みて、竹の藪蔭(やぶかげ)から高くあがる火竜の勢いと、その火の子をながめて、ホッと吐息をついた時、弁信の耳には、それが早鐘(はやがね)のように聞え、その口が、耳までさけているように見えましたものですから、「ああ、お嬢様、あなたは怖ろしいことをなさいましたね」「ええ」「あなたは、いけません、それだから、私が怖れました、ああ、今や、その怖れが本物になりました」「何を言ってるの、弁信さん」「お嬢様、あなたこそ、何を言っていらっしゃるのです」「わたしは何も言ってやしない、ただ、怖いから逃げて来たのよ」「火事が怖ろしいだけではございますまい、あなたのお胸には、良心の怖れがございます」「何ですって」「ああ、あの火事の知らせる早鐘よりも、あなたのお胸の轟(とどろ)きが、私の胸に高く響くのはなにゆえでしょう、あの火事の炎の色は見えませんけれど、あなたの息づかいが、火のように渦を巻いているのが聞えます」「弁信さん、出鱈目(でたらめ)を言ってはいけません、誰だって……誰だって、こんなに急いで来れば動悸(どうき)がするじゃありませんか、そんなことを言うのはよして頂戴、そうでなくってさえ、わたしは怖くてたまらない」「何が、そんなに怖いのでしょう、火事は家を焼き、林を焼くかも知れませんが、人の魂を焼くものではありません」「だって、だって、弁信さん、お前は眼が見えないから、それで怖いものを知らないんでしょう」「怖いのは、火事ではありません、人の心です」「いやなこと言わないようにして下さいよ」「本当のことを言っているのでございます、私には、火事の火の色は見えませんけれども、心の火の色が見えます」「今は、そんなことは言わないで頂戴」「そうして、お嬢様、あなたは、これからどこまでお逃げなさるつもりですか」「そうでしたね、こんなに逃げたって仕方がありませんわね、それがどこまで逃げられるものでしょう」「わたしと一緒にお帰り下さいまし」「まあ、ゆっくりしておいで、あの火事をごらん、まあ、なんて綺麗(きれい)な火の色でしょう」お銀様と、弁信は、もつれるように並んで歩きながら、広い竹藪(たけやぶ)の中の小径(こみち)を通って笹の間から、チラチラと見える火の勢いがようやく盛んなのを前にして、やがて藪を出ると、そこは、だらだら下りの小高いところになっていました...
中里介山 「大菩薩峠」
...はい、もうやがて間近いところの乗鞍ヶ岳の麓(ふもと)の、白骨の温泉まで私は参るその途中なんでございます……どうして、また今時分、信濃の国の白骨の温泉なんぞへ行く気になったのか――それは一言でお答えを致すことができます...
中里介山 「大菩薩峠」
...「今時分、何の用事だい? 泥棒じゃあるめえし、夜中に踏み込まなくたって、逃げも隠れもしやしねえよ」(此儘行ったんじゃ困る...
葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
...今時分になって」と...
広津柳浪 「今戸心中」
...明日の今時分までここで寝ん寝だ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「悪の帝王」
...今時分からそんなものを持つて来やがる!」滝は...
牧野信一 「籔のほとり」
...その先生のほうは今時分...
正岡容 「寄席」
...「お前どうして今時分こんなところへ来ているのか?」娘は父親のそばへ来て...
室生犀星 「みずうみ」
...今時分どこへ往くのだと聞かれた時...
森鴎外 「雁」
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