...さすがにまだ生暖い仄かな闇が残つてゐた...
芥川龍之介 「南京の基督」
...仄かに廿日あまりの月が昇つて...
今井邦子 「誠心院の一夜」
...雨の小止みには板塀の黒いのが仄かにうつる...
鈴木三重吉 「女の子」
...あてもなくじっと傾ける耳に伝わる仄かなおとずれ――「くる……くる……くる……」と...
薄田泣菫 「初蛙」
...既に仄かな色情は発芽していた...
外村繁 「澪標」
...頭から仄かに湯気を立てることがある...
豊島与志雄 「自由人」
...向うに仄かな明るみが見えていた...
豊島与志雄 「反抗」
...或る隠秘な仄かな底深い気持に陥っていく...
豊島与志雄 「父母に対する私情」
...禿山の頂近くには一筋の土手のやうなものが仄かに見える...
長塚節 「才丸行き」
...女は仄かに嫣然として打ち消すやうに輕く手を擧げた...
長塚節 「菜の花」
...カクメイとは北方に吹く風か……お釈迦様私はお釈迦様に恋をしました仄かに冷たい唇に接吻すればおゝもつたいない程の痺れ心になりまする...
林芙美子 「蒼馬を見たり」
...白く透きとほつた朝の空に仄かに紅い曙光がさしたやうに血の色を帯びて...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...僅かに形骸だけはのこっていた少年時の旧東京の下町住居への仄かなる郷愁をおぼえていたら...
正岡容 「我が圓朝研究」
...仄かに胸を流れ去るのを感じる...
宮本百合子 「思い出すかずかず」
...どこかのお寺で鐘をついているのが仄かにきこえます...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...空明りを慕うているさまは恋のように仄かなものである...
室生犀星 「庭をつくる人」
...仄かな赤い光りに照らし出された花壇の片隅を...
夢野久作 「白菊」
...月の吐息か 仄かな調(しらべ)は闇をば流れ来て侘(わび)しいこの身の悶(もだ)ゆる心に 響け 調よ...
蘭郁二郎 「※[#「氓のへん/(虫+虫)」、第3水準1-91-58]の囁き」
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