...そして一時(いっとき)も早くこんな息気(いき)づまるように圧迫して来る二人(ふたり)の間の心のもつれからのがれる術(すべ)はないかと思案していた...
有島武郎 「或る女」
...もつれあってさびしい...
伊藤野枝 「転機」
...「いやだといえばこうするのさ!」肉弾と肉弾とがはげしい勢いでもつれあったかと思うと...
江戸川乱歩 「少年探偵団」
...私は、細田さまのおかきになる絵に夢中になって、あんなお方の奥さまになったら、どんなに、まあ、美しい日常生活を営むことが出来るでしょう、あんなよい趣味のお方と結婚するのでなければ、結婚なんて無意味だわ、と私は誰にでも言いふらしていたので、そのために、みんなに誤解されて、それでも私は、恋も愛もわからず、平気で細田さまを好きだという事を公言し、取消そうともしなかったので、へんにもつれて、その頃、私のおなかで眠っていた小さい赤ちゃんまで、夫の疑惑の的になったりして、誰ひとり離婚などあらわに言い出したお方もいなかったのに、いつのまにやら周囲が白々しくなっていって、私は附き添いのお関さんと一緒に里のお母さまのところに帰って、それから、赤ちゃんが死んで生れて、私は病気になって寝込んで、もう、山木との間は、それっきりになってしまったのだ...
太宰治 「斜陽」
...・あぶらむしおまへのひげものびてゐるあかつきのあかりで死んでゆく虫で・水音のしんじつ落ちついてきたもうはれて葉からこぼれる月のさやけさ柿がうれてたれて朝をむかへてゐる□・露も落葉もみんな掃きよせる・秋の朝の土へうちこみうちこむ・朝の秋風をふきぬけさせてをく・秋空の電線のもつれをなをさうとする・枇杷から柿へ...
種田山頭火 「其中日記」
...郵便も来ない日のつくつくぼうし・風が雨となる案山子を肩に出かける・電線とほく山ふかく越えてゆく青葉・竹の葉のすなほにそよぐこゝろを見つめる昼ふかく虫なく草の枯れやうとして・てふてふもつれつつかげひなた(楠)・風鈴しきり鳴る誰か来るやうな九月十一日秋晴...
種田山頭火 「其中日記」
...それがまた、半ば泥に埋もれて、脱(のが)れ出ようともがいているようなのや、お互いにからみ合い、もつれ合って、最期の苦悶(くもん)の姿をそのままにとどめているようなのもある...
寺田寅彦 「柿の種」
...また自分ももつれ合ってそれと一緒に飛んで行こうという気になったのか...
中里介山 「大菩薩峠」
...藻屑もつれて、ゆるく漾ふ...
夏目漱石 「水底の感」
...直吉はもつれつきたいやうな気持ちだつたが...
林芙美子 「瀑布」
...下脣のしたにもつれた髭は弱々しい息とともにふるえた...
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 松村みね子訳 「魚と蠅の祝日」
...もつれた映像のうちに沈んだり...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「予言者の家で」
...髪毛はひと掴みの藁屑(わらくず)のようにもつれているし...
山本周五郎 「お繁」
...御弓組を二十人もつれて戸田さまがいらしったり...
山本周五郎 「おばな沢」
...二人はもつれあって歩いていた...
山本周五郎 「ちゃん」
...二人はもつれあうように歩いていた...
山本周五郎 「へちまの木」
...古河から十五になる小僧もつれて来て呉れた...
山本周五郎 「柳橋物語」
...舌も大分もつれ気味で足元も危なかつたが...
吉井勇 「黒足袋」
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