...木伐りの伐り屑を拾いあつめる権利に対してさえ高い代価をはらう...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...夫婦そろって自信がなく、はらはらして、お互いの顔が、謂わば羞皺(はじしわ)で一ぱいで、あの人は、たまには、私にうんと甘えてもらいたい様子なのですが、私だって、二十八のおばあちゃんですし、それに、こんなおたふくなので、その上、あの人の自信のない卑下していらっしゃる様子を見ては、こちらにも、それが伝染しちゃって、よけいにぎくしゃくして来て、どうしても無邪気に可愛く甘えることができず、心は慕っているのに、逆にかえって私は、まじめに、冷い返事などしてしまって、すると、あの人は、気むずかしく、私には、そのお気持がわかっているだけに、尚(なお)のこと、どぎまぎして、すっかり他人行儀になってしまいます...
太宰治 「皮膚と心」
...寝床の上に腹這(はらば)いに起き直って...
近松秋江 「黒髪」
...いつか何かのディスクシオンでひどく興奮して今にも相手につかみかかるかと思われてはらはらしたことがあった...
寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
...燃ゆばかり熱き涙はらはらと苦しき息をつき...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...肚(はら)の中でほとんどもう憤懣(ふんまん)に変わりかけていたからである...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...ただ徒にはらはらと案じながら...
外村繁 「夢幻泡影」
...腹(はら)ばいになって芝生(しばふ)に顔をうずめた...
ロマン・ローラン 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...たとい人が最大の努力をはらってもついに達する所は真理の近似値である...
永井隆 「ロザリオの鎖」
...柔術(やはら)の稽古をして居るくらゐで...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...小万に顔を見合わせて涙をはらはらと零(おと)し...
広津柳浪 「今戸心中」
...一五「そなたを殺す? 殺したとて、わしに何の役に立とう――まず、気を鎮(しず)めたがよいと申すに――」と、広海屋は、長崎屋がつかみしめた袖を、振りはらって、「そなたは、ちと、気がどうかしたそうな!」「気も狂おう! 二十年の、苦労、艱難(かんなん)、おぬしのために滅茶滅茶じゃ――覚えておれ――どうするか!」長崎屋は、ズイと立って、荒々しい足どりで、広間を出て、そのまま、階下に下りてしまったが、荒れすさんだ気色を見て、茶屋を出てゆくのを、引き止めるものもないらしかった...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...黙って逃げるのも業腹(ごうはら)だねえ――眺めまわすと...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...仏鷲頭山に在った時波羅奈(はらな)王の輔相一男児を生むに三十二相備わり満身紫金色で相師感嘆す...
南方熊楠 「十二支考」
...木曾の藪原(やぶはら)や奈良井(ならい)は櫛(くし)の産地として名が聞えます...
柳宗悦 「手仕事の日本」
...杉原七里大門(すぎはらななりおおもん)まで門(かど)ほめ一 まゐり来て此(この)もんを見申せや...
柳田国男 「遠野物語」
...暗黒と頽廃(たいはい)と社会的混乱の続いた室町期の末にその萌芽(ほうが)を孕(はら)み...
吉川英治 「随筆 宮本武蔵」
...自来也鞘の武士……すなわち蜂須賀の原士(はらし)天堂一角であった...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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