...折り重なった鈍色(にぶいろ)の雲のかなたに夕日の影は跡形もなく消えうせて...
有島武郎 「或る女」
...しかし老婆はもう私の顔を思ひ出す気力も失くしたのかそのにぶい眼をぼんやり私の方に向けたまゝで...
伊藤野枝 「白痴の母」
...さらでも記憶力のにぶい私の臆測であるから...
宇野浩二 「思ひ出すままに」
...にぶいひびきだけだった...
海野十三 「宇宙の迷子」
...赤耀館の大時計がにぶい音響をたてて...
海野十三 「赤耀館事件の真相」
...うろこをにぶい銀色に光らせて...
江戸川乱歩 「影男」
...智恵のにぶい一種の低能児ですね...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...にぶい光をはなっていました...
江戸川乱歩 「鉄塔の怪人」
...しかもそのにぶい刃先には...
大阪圭吉 「灯台鬼」
...にぶい睡(ねむ)たそうな青い目が時折り表情にとんでかがやいた...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...森からときどき、にぶい、めりめりという音が聞えて來た...
アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ Annette von Droste=Hulshoff 番匠谷英一訳 「ユダヤ人のブナの木」
......
長沢佑 「レポーター」
...この間機体はにぶい赤色に見える程度まで...
中谷宇吉郎 「宇宙旅行の科学」
...にぶいろにくもった空のもとに...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ヴェニスに死す」
...なかば乾いてにぶい濁った色を見せている...
水野葉舟 「黄昏」
...兵船らしい一隻(せき)もなくにぶい波光をたたえた五月の海が夕を待っているだけである...
吉川英治 「私本太平記」
...晁蓋は、身うごきもならぬ体のまま、にぶい眸で、枕頭にいた宋江と呉用の顔を見あげ、そして虫の息で……...
吉川英治 「新・水滸伝」
...にぶい鳶(とび)色の紙をもっておおわれていた...
リットン Edward George Earle Bulwer-Lytton 岡本綺堂訳 「世界怪談名作集」
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