...樹液のにじみ出ている所にはきっと穴を出たばかりの小さな昆虫が黒くなってたかっていた...
有島武郎 「フランセスの顔」
...しなびた顔にじっと見入っていた――...
海野十三 「地獄の使者」
...筋ばった蒼白(あおじろ)い脂(あぶら)の滲(にじ)み出たような女の肉体につながった...
田中貢太郎 「文妖伝」
...大膽に世間を踏み躙(にじ)れないといふ事が自分に禍ひをしてゐるのだと思ふと...
田村俊子 「木乃伊の口紅」
...絶えざる溝蚊(どぶか)の声の中にじっと眺めやる時...
永井荷風 「※[#「さんずい+(壥−土へん−厂)」、第3水準1-87-25]東綺譚」
...では、せっかくのおすすめでございますから、それに従いまして、遠慮なく罷(まか)り出ますでございます」「あぶないですよ」「いいえ、大丈夫でございます、眼はごらんの通り不自由でございますが、御方便に、勘の方が働きますものでございますから」「いや、何しても、無事でお前さんがここへ来られたことは、奇蹟というてもいい」「はい、わたくしと致しましても、不思議の感がいたすのでございます」こう言って、弁信法師は炉辺に近いところへ、にじり出でて、ちょこなんとかしこまりこんでしまいました...
中里介山 「大菩薩峠」
...漸く小徑へ出た時には余の指からは血が少しにじんで居た...
長塚節 「佐渡が島」
...しまいには焼火箸(やけひばし)のようにじゅっといってまた波の底に沈んで行く...
夏目漱石 「夢十夜」
...むやみに巾着切(きんちゃくき)りのようにこせこせしたり物珍らしそうにじろじろ人の顔なんどを見るのは下品となっている...
夏目漱石 「倫敦消息」
...いまだにそのにじんだ描きかたが目のなかに殘つてゐる...
長谷川時雨 「桃」
...弐拾壱(にじゅういち)時候が次第に寒くなって...
森鴎外 「雁」
...インクの瀋(にじ)んだのを吸ひ取る沙(すな)が...
ジユウル・クラルテエ Jules Clarete 森林太郎訳 「猿」
...神をおそれぬ荒武者たちに踏みにじられんとす!(ウェルギリウス)と嘆息した...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...鎌倉最後の日をかざった一条の若い虹(にじ)だったといってよい...
吉川英治 「私本太平記」
...この流囚(るしゅう)の身を一時たりと温かに養ってくれたあの人の恩顧を踏みにじッては去れません...
吉川英治 「新・水滸伝」
...大法を蹂躙(ふみにじ)らるるとの自白だ」喚(わめ)き立てると...
吉川英治 「親鸞」
...紙に滲(にじ)んだ桃色の唾(つば)――人にきらわれる癆咳病(ろうがいや)みの血――...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...虹(にじ)のようにこぼれていた...
吉川英治 「松のや露八」
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