...どっちみち碌(ろく)なことはあるまいと恐れを抱(いだ)いていただけに「聴いてやろう」と云われるとかえって尻込(しりご)みをした...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...どっちみちだよ、解(わか)るかい?……」イワン・ドミートリッチは細君の顔を見ながら、まるで赤ん坊が何かきらきらする物を見せられた時のような、幅ったるいぽかんとした笑顔になった...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「富籤」
...どっちみち同じじゃないか――どうせ二人の間は...
ツルゲーネフ 神西清訳 「はつ恋」
...「人の物を盗(と)ると……十両からこうなるんだぜ、九両二分まではいいが、十両からになると、どっちみち、こうなる運命はのがれられねえんだ、間男(まおとこ)と盗人(ぬすっと)は、首の落ちる仕事だよ」「まあ、お茶をもう一つ、おあがんなさいましよ」と、与八が熱いお茶の二杯目を七兵衛にすすめると、「こりゃどうも御馳走さま」「ここにたらし餅(もち)がある、よろしかあ、おあがんなさいまし」与八は、傍(かたえ)のほうろくの中にあったたらし餅をとり出して、お盆の上に載せると、「どうも済みませんねえ」七兵衛は与八のもてなしぶりを、ようやく不思議な色でながめました...
中里介山 「大菩薩峠」
...お君はどっちみち自分のものにならないと諦めている様子だ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...どっちみち、あの碁石をならべたようなのが、手がかりのもとになったのでしょうが、いったい、あれは、なんでありました」顎十郎は、顎を撫でながら、「おれも、あれには一ぷくふいた...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...今になって破約をしたら、どっちみち、只ですむわけはない...
久生十蘭 「犂氏の友情」
...私にとってはどっちみち同じこってすよ...
久生十蘭 「キャラコさん」
...どっちみち、いつまでも引きずりまわしているようなものじゃないわね...
久生十蘭 「キャラコさん」
...どっちみち、われわれには関係のないことです、エヘン」これには、みな、噴(ふ)きだしてしまう...
久生十蘭 「キャラコさん」
...どっちみち胡散(うさん)臭い目で見られる...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「真劇シリーズ」
...どっちみち船から見えんくらい遠くに離れて仕事をするんですからこっちへ入らっしゃい...
夢野久作 「爆弾太平記」
...どっちみち二晩三晩は...
吉川英治 「新・水滸伝」
...どっちみち、家庭に恵まれない冷たいものが、彼の幼時をつつんでいることは見遁(みのが)し難(がた)い...
吉川英治 「随筆 宮本武蔵」
...どっちみち片づけてしまうことが...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...――たしかに仇(かたき)の賛之丞だとはいうが、もし、まったく別人だったらつまらない話で、どっちみち、今夜は鮎川の部屋に泊まるにしても、そうだとしたら、気楽に訪れてくつろいだがよい...
吉川英治 「八寒道中」
...腹だたしくもあるし、蠱惑(こわく)な眼の中へ吸い込まれそうな危うさも感じられて、どっちみち、早く、この二階から飛び出したい...
吉川英治 「松のや露八」
...ああいう人間と生涯(しょうがい)の道中はどっちみちともにできそうもない自分である...
吉川英治 「松のや露八」
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