...とうの昔誰の墓とも知れないやうに...
芥川龍之介 「地獄變」
...道の上の秘密(ひみつ)もとうの昔に看破(かんぱ)しているのに違いない...
芥川龍之介 「少年」
...もう井月はとうの昔...
芥川龍之介 「庭」
...彼等を造つた天才は――豊干(ぶかん)の乗つた虎の足跡も天台山の落葉の中にはとうの昔に消えてゐるであらう...
芥川龍之介 「僻見」
...それもとうの昔に「コマガタ」と発音するようになってしまった...
芥川龍之介 「本所両国」
...「僕も稲から米のとれる位のことはとうの昔に知つてゐたさ...
芥川龍之介 「正岡子規」
...私の生涯はもうとうの昔に終ってしまっていたはずなのですから...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「鉄の処女」
...ひとり旅して、菅笠(すげがさ)には、同行二人と細くしたためて、私と、それからもう一人、道づれの、その、同行の相手は、姿見えぬ人、うなだれつつ、わが背後にしずかにつきしたがえるもの、水の精、嫋々(じょうじょう)の影、唇赤き少年か、鼠いろの明石(あかし)着たる四十のマダムか、レモン石鹸にて全身の油を洗い流して清浄の、やわらかき乙女か、誰と指呼(しこ)できぬながらも、やさしきもの、同行二人、わが身に病いさえなかったなら、とうの昔、よき音(ね)の鈴もちて曰(いわ)くありげの青年巡礼、かたちだけでも清らに澄まして、まず、誰さん、某さん、おいとま乞いにお宅の庭さきに立ちて、ちりりんと鈴の音にさえわが千万無量のかなしみこめて、庭に茂れる一木一草、これが今生(こんじょう)の見納め、断絶の思いくるしく、泣き泣き巡礼、秋風と共に旅立ち、いずれは旅の土に埋められるおのが果なきさだめ、手にとるように、ありありと、判って居ります...
太宰治 「二十世紀旗手」
...夫は私がとうの昔から鍵の所在を知っていたことを...
谷崎潤一郎 「鍵」
...その光線はとうの昔に消えて...
寺田寅彦 「銀座アルプス」
...世界では奨励時代はとうの昔に過ぎ去ってしまっているのではないか...
寺田寅彦 「自由画稿」
...吾々はとうの昔に通りすぎている...
豊島与志雄 「傍人の言」
...種子が形見の貴金属類は内々(ないない)でとうの昔売り飛(とば)された後である...
永井荷風 「ひかげの花」
...とうの昔にブチ切られちまったんですから」「でも...
中里介山 「大菩薩峠」
...とうの昔に質に置いて呑むよ」手のつけやうはありません...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...とうの昔に金貨でも始めて居るよ」平次はもう妥協する心持もありませんでした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...とうの昔に癇癪を起してスッパ抜いているところだが...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...そんな言葉は俺達はとうの昔に忘れてしまつてゐるよ...
牧野信一 「変装綺譚」
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