...道の上の秘密(ひみつ)もとうの昔に看破(かんぱ)しているのに違いない...
芥川龍之介 「少年」
...私の生涯はもうとうの昔に終ってしまっていたはずなのですから...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「鉄の処女」
...もう、とうの昔に、うまく胡麻化して行く方法をちゃんと研究してあるんだから...
大杉栄 「日本脱出記」
...ひとり旅して、菅笠(すげがさ)には、同行二人と細くしたためて、私と、それからもう一人、道づれの、その、同行の相手は、姿見えぬ人、うなだれつつ、わが背後にしずかにつきしたがえるもの、水の精、嫋々(じょうじょう)の影、唇赤き少年か、鼠いろの明石(あかし)着たる四十のマダムか、レモン石鹸にて全身の油を洗い流して清浄の、やわらかき乙女か、誰と指呼(しこ)できぬながらも、やさしきもの、同行二人、わが身に病いさえなかったなら、とうの昔、よき音(ね)の鈴もちて曰(いわ)くありげの青年巡礼、かたちだけでも清らに澄まして、まず、誰さん、某さん、おいとま乞いにお宅の庭さきに立ちて、ちりりんと鈴の音にさえわが千万無量のかなしみこめて、庭に茂れる一木一草、これが今生(こんじょう)の見納め、断絶の思いくるしく、泣き泣き巡礼、秋風と共に旅立ち、いずれは旅の土に埋められるおのが果なきさだめ、手にとるように、ありありと、判って居ります...
太宰治 「二十世紀旗手」
...夫は私がとうの昔から鍵の所在を知っていたことを...
谷崎潤一郎 「鍵」
...もうとうの昔に四十の坂を越していた...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「接吻」
...利口な人間にはとうの昔からわかりきったこと...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「ワーニャ伯父さん」
...とうの昔に体外に排泄(はいせつ)されてどこかよその畑の肥料にでもなっていたことであろうと思う...
寺田寅彦 「さるかに合戦と桃太郎」
...毎日繰り返される三原山型の記事にはとうの昔にかびがはえているが...
寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
...もうとうの昔に無くなってしまって...
寺田寅彦 「自由画稿」
...とうの昔に死んだ祖父の事を...
寺田寅彦 「石油ランプ」
...複製(リプロダクション)の技術としての絵画はとうの昔に科学の圧迫を受けて滅亡してしまった...
寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
...昔読んだ本もとうの昔に郷里の家のどこかに仕舞い込まれたきり見たことがない...
寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
...とうの昔にこわれてしまったが...
寺田寅彦 「二十四年前」
...とうの昔に廃業して...
中里介山 「大菩薩峠」
...品川の女郎上がりのお瀧――恥も外聞もとうの昔に摺りきらしてしまつた凄い年増が軍師で...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...とうの昔に手を回して書き換へから登記までも済ませてゐるといふのも知らないで...
牧野信一 「鬼の門」
...とうの昔に見えなくなってしまったのに...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「墓地へゆく道」
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