...自分は鍛冶場の黒い煙と硫黄のちらつく光の中から...
アーヴィング 高垣松雄訳 「驛傳馬車」
...眼に入るものは、二三の漁火(ぎょか)の星の如く、遠くちらつくと、稀に、銚子行汽船の過ぐるに当り、船燈長く波面に揺(ゆる)き、金蛇(だ)の隠現(いんけん)する如きを見るのみにして、樹林無く、屋舎(おくしゃ)無く、人語馬声無く、一刻一刻、人間界より遠ざかる...
石井研堂 「大利根の大物釣」
...眼の前に歌留多の札がちらつく...
石川啄木 「鳥影」
...忽(たちま)ち灯(ひ)のちらつく暗(くら)がりに...
泉鏡太郎 「麻を刈る」
...その街衢と街衢との切れ目毎にちらつく議事堂の尖塔(せんとう)を遠望すると...
谷崎潤一郎 「細雪」
...わすれられたざくろが一つ(改作再録)・笹原の笹の葉のちらつく雪・雪ふりつもる水仙のほのかにも・かすかな音がつめたいかたすみ・茶の木の雪のおのがすがた・投げだしてこのからだの日向・どうすることもできない矛盾を風が吹く・つい嘘をいつてしまつて寒いぬかるみ三月十四日まつたく春だ...
種田山頭火 「其中日記」
...ぼんやり縁に坐つてゐる、――蝶がとぶ、とんぼがからむ、蜂がなく、虫がなく、木の葉がちる、小鳥がちらつく、――私の沈んだ情熱がそこらいちめんにひろがつてゆく...
種田山頭火 「其中日記」
...その時向うにちらつく火影を認めて彼は凝乎と立ち止った...
豊島与志雄 「恩人」
...帯のようなかたちの光がちらつくだけで...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...ちらつく暖炉の明かりの中...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「謎の四つ指」
...何か目まぐるしく眼前にちらつくのであった...
本庄陸男 「石狩川」
...疲れるとちらつくのですね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...金燈籠(かなどうろう)からちらつく灯は...
室生犀星 「幻影の都市」
...夜半にまくらを返すときにちらつくもののある間...
室生犀星 「陶古の女人」
...雲と雲との間にそれがちらつく毎晩こちらから覗いてゐるとあちらでも毎晩覗いてゐるながく覗いてゐるとますます親切に鋭どくなる星...
室生犀星 「星より來れる者」
...ちらつく白いきもの...
室生犀星 「星より來れる者」
...ちらつく火影(ほかげ)にすかして...
カミイユ・ルモンニエエ Camille Lemonnier 森林太郎訳 「聖ニコラウスの夜」
...時々ははるか対方(むこう)の方を馳(は)せて行く馬の影がちらつくばかり...
山田美妙 「武蔵野」
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