...こればかりは冷たさうな掛守(かけまも)りの銀鎖もちらつく程...
芥川龍之介 「鼠小僧次郎吉」
...眼に入るものは、二三の漁火(ぎょか)の星の如く、遠くちらつくと、稀に、銚子行汽船の過ぐるに当り、船燈長く波面に揺(ゆる)き、金蛇(だ)の隠現(いんけん)する如きを見るのみにして、樹林無く、屋舎(おくしゃ)無く、人語馬声無く、一刻一刻、人間界より遠ざかる...
石井研堂 「大利根の大物釣」
...心にちらつく血の顔の幻を追ひながら...
石川啄木 「二筋の血」
...」と笛の音に瞳がちらつく...
泉鏡花 「歌行燈」
...真白(まっしろ)にこうちらつく工合は...
泉鏡花 「婦系図」
...呉服屋の店頭に吊してある色々の小切が目の前にちらつく...
高濱虚子 「俳諧師」
...時々ちらつく金鎖に...
田澤稲舟 「五大堂」
...ぼんやり縁に坐つてゐる、――蝶がとぶ、とんぼがからむ、蜂がなく、虫がなく、木の葉がちる、小鳥がちらつく、――私の沈んだ情熱がそこらいちめんにひろがつてゆく...
種田山頭火 「其中日記」
...いろいろの幻影がちらつく...
種田山頭火 「白い路」
...五十鈴川)そのながれにくちそゝぐたふとさはまつしろなる鶏の若葉のにほひも水のよろしさもぬかづく(二見ヶ浦)春波のおしよせる砂にゑがく旅人として小雪ちらつくを(津にて)・けふはこゝにきて枯葦いちめん・麦の穂のおもひでがないでもないこどもといつしよにひよろ/\つくし春の夜の近眼と老眼とこんがらがつて影は竹の葉の晴れてきさうな春めく雲でうごかない(辨天島)すうつと松並木が...
種田山頭火 「旅日記」
...あまりにその面影が眼先にちらつくので...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...暖たかき陽炎(かげろう)のちらつくなかに甦(よみが)えるのは情(なさ)けない...
夏目漱石 「虞美人草」
...生姜畑枯れ山の芒(すすき)ア穂に出てちらつくが赤い畑の唐辛(たうがらし)帯にしめよか襷(たすき)にしよかどうせ畑の唐辛石を投げたら二つに割れた石は磧(かはら)で光つてる安(やす)が女房(にようぼ)の連ツ子はしよなりしよなりともう光る生姜畑の闇の晩背戸へ出て来て光つてる...
野口雨情 「別後」
...何か目まぐるしく眼前にちらつくのであった...
本庄陸男 「石狩川」
...ちらつく火影(ほかげ)にすかして...
カミイユ・ルモンニエエ Camille Lemonnier 森林太郎訳 「聖ニコラウスの夜」
...そのかげにちらつく眼をそばめた母の顔が意地の悪い冷いものに思われるのだった...
矢田津世子 「父」
...嫩葉色の顔にちらつく登り路を暫く行くと...
横光利一 「旅愁」
...瞼(まぶた)にちらつく...
吉川英治 「雲霧閻魔帳」
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