...一時間ほどの後には葉子はしかしたった今ひき起こされた乱脈騒ぎをけろりと忘れたもののように快活で無邪気になっていた...
有島武郎 「或る女」
...あのばたんと云う音とたった今見えた黒い影とは正しくそれだったと思えるのであるが...
谷崎潤一郎 「猫と庄造と二人のおんな」
...おまえが、わしの胸を射貫(いぬ)いても、この船には長く居られまいぞ」「え! 何故だ」「船底の、火薬庫が、あと三分で、爆発するだろ」「えッ!」「わしは、たった今、火薬庫に、導火線を投入れ、その先に火を点(つ)けて来たのさ...
寺島柾史 「怪奇人造島」
...それともたった今...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...そんな時代になるかも知れませんよ」五十年もたった今日...
野村胡堂 「胡堂百話」
...青鼠色(あおねずみいろ)の眼には、たった今、大好きなお友達を認めたというような表情が浮びました...
フランセス・ホッヂソン・バァネット Frances Hodgeson Burnett 菊池寛訳 「小公女」
...老練なコヨは、急にすました顔つきになって、たった今、ここへ来たという素振りをした...
火野葦平 「花と龍」
...収 おばさんもそう言った?あさ子 たった今よ...
森本薫 「みごとな女」
...それを洪水が千二百里以上も隔たった今の場所まで引離したということは...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...今日もたった今まで飲んだところだ...
夢野久作 「白髪小僧」
...たった今まで十七八に見えていた...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...今朝から見たり聞いたりした色々様々な事が、さながら百色眼鏡でも覗いているかのように、云い知れぬ興味と色彩とを帯びつつ、クルリクルリと眼の前で回転し初めると同時に、たった今まで、とてもオッカナイ、物騒な相手に見えていた二人の博士が、チットモ怖くなくなった許(ばか)りでなく、ステキに面白いオモチャ見たような存在に見えて来たのであった...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...ついに今夜――たった今...
吉川英治 「大岡越前」
...たった今、そちも勅使のお旨をみなと一しょに伺っていたであろうが」「はっ」「あの通りを、叔父さまの信濃坊源盛(しなのぼうげんせい)につたえればよいのだ...
吉川英治 「私本太平記」
...たった今、あのすさまじい戦刃の中で、血を浴びて来た人達とはどうしても見えないのである...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...鋳(い)てあるのか」「たった今...
吉川英治 「平の将門」
...「――六条柳町の編笠茶屋を出てから、雪がふるのに、武蔵め、牛のようにのそのそ歩いておりましたが、たった今、祇園神社の石垣をのぼって境内へはいりました...
吉川英治 「宮本武蔵」
...今も、たった今、江戸城の大規模な改修工事をながめ、大名小路の金碧(こんぺき)さんらんたる門や構えを見て来た眼で――ここの暗やみ坂の青葉の底に、そこらの百姓家の屋根と変らない――ただ鰹木と注連(しめ)だけが違う――佗(わび)しいお宮を見ると、猶々(なおなお)、へんな気もちがして、(徳川のほうが偉いのかしら)と、単純に不審(いぶか)った...
吉川英治 「宮本武蔵」
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