...それほど、私が閣下の御留意を請いたいと思う事実には不可思議な性質が加わっているのでございます...
芥川龍之介 「二つの手紙」
...B 併し同感者の名に於いて集つて來る野次馬はそれほど簡單に無視する譯には行くまい...
阿部次郎 「三太郎の日記 第三」
...しかしそれほど簡単でないものもある...
寺田寅彦 「映画芸術」
...先刻、お玉が座敷へ通されないことを、身分が違う、つまり人交(ひとまじわ)りのできないさげすみの悲しさで、そうした侮りの待遇を受けても、自分もそれで是非ないものと思っており、周囲もまたそれを侮りともさげすみとも思っていないという麻痺(まひ)した習慣のせいだとばかり思っていた黒羽二重は、ここに至って、そうでない、わざと地下(じげ)へうつして、蓆(むしろ)の上から聞くことが、この歌の歌い手と、この節の風情に最もよくうつり合うものであるから、それだから、わざと庭へおろして聞かせるように趣向を凝(こ)らしたものだと、黒羽二重はこういうように独合点をしてしまったほど、それほど、庭の中へ、燈籠を少し左へ避(よ)けて後ろへあしらった、お玉の形がよかったものであります...
中里介山 「大菩薩峠」
...すんでのことに危ねえところ――それほどまでに思いこんだ...
中里介山 「大菩薩峠」
...ただそれほどに活力がないばかりだ...
夏目漱石 「草枕」
...以前にもそれほど信頼の置ける肺をもっていたわけではなかった...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「変身」
...私はそれほどでないけれども...
久生十蘭 「手紙」
...それほど此の本を書いた作家がその中に自分を入れまぜてゐないやうに見えるからだ...
堀辰雄 「小説のことなど」
...それほどではないが...
牧野信一 「手紙」
...トント原稿市場に遠ざかつてゐた私はそれほど迂濶(うくわつ)だつた...
宮地嘉六 「老残」
...今居るたくさんの人間の一人々々にしたつて他の人間とそれほど變つていないのかも知れない...
三好十郎 「肌の匂い」
...殊(こと)にお登和さんの事が極まって中川君同胞(きょうだい)が僕のためにそれほどまで尽力せられると聞いては僕も感泣(かんきゅう)してその恩に酬(むく)ゆるつもりだ...
村井弦斎 「食道楽」
...それほどたいしたことではないのである...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...抽斎はそれほど厭(いや)とは思わなかった...
森鴎外 「渋江抽斎」
...貞操ということを自己の生活の上にそれほど重大な問題であるとは考えず...
与謝野晶子 「鏡心灯語 抄」
...それほどの魏軍の苦境を知りながら...
吉川英治 「三国志」
...それほど大事な品物とも...
吉川英治 「松のや露八」
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