...十二月は僕は何時(いつ)でも東京にゐて、その外(ほか)の場処といつたら京都(きやうと)とか奈良(なら)とかいふ甚(はなは)だ平凡な処しかしらないんだけども、京都へ初めて往(い)つた時は十二月で、その時分は、七条(しちでう)の停車場も今より小さかつたし、烏丸(からすまる)の通(とほり)だの四条(しでう)の通(とほり)だのがずつと今より狭(せま)かつた...
芥川龍之介 「一番気乗のする時」
...一(ひ)と口(くち)に申(もう)したらその時分(じぶん)の私(わたくし)は...
浅野和三郎 「霊界通信 小桜姫物語」
...その時分緑雨は『国会新聞』の客員という資格で...
内田魯庵 「斎藤緑雨」
...その時分のことを少しも覚えていないのです...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...賞与の銀時計やはりその時分のこと...
相馬愛蔵、相馬黒光 「一商人として」
...その時分蔵前の北元町(きたもとまち)四番地へ転宅することになった...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...ちょうどその時分...
辻潤 「ふもれすく」
...その時分から、十歳年齢(とし)の下の弟が生れたので、これを背負つて、夕方、母の代りに、本町(ほんちやう)から骨屋町(ほねやまち)へ、惣菜を買ひに行つた...
直木三十五 「貧乏一期、二期、三期」
...その時分(じぶん)のお話にいろいろ花が咲いているのかも知れませぬ...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...年はその時分既に四十五...
永井荷風 「つゆのあとさき」
...けれどもその時分の政治は...
中里介山 「大菩薩峠」
...娘は申すまでもなく、本所の相生町の老女の邸のお松であって、この男を知っているのは、ずっと以前、神尾主膳の伝馬町の屋敷に仕えていた時分のことで、その時分から、この福村は神尾の屋敷へ出入りしていた道楽友達であります...
中里介山 「大菩薩峠」
...その時分は、お婆さんの方は、早くも湯槽に身を漬けておりました...
中里介山 「大菩薩峠」
...その時分の私はKと大分(だいぶ)考えが違っていましたから...
夏目漱石 「こころ」
...その時分の二千両は...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...この通りが何んとなく僕になつかしくなつたのは既にその時分かららしい...
堀辰雄 「春淺き日に」
...その時分には酒場でグデングデンになって狸の睾丸(きんたま)の夢か何か見ていたもんだから吾輩は全く知らなかったんだ...
夢野久作 「超人鬚野博士」
...そぞろにその時分が懐かしくなる...
吉井勇 「青春回顧」
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