...のしのしみしり、大皿を片手に、そこへ天井を抜きそうに、ぬいと顕(あらわ)れたのは、色の黒い、いが栗(ぐり)で、しるし半纏(ばんてん)の上へ汚れくさった棒縞(ぼうじま)の大広袖(おおどてら)を被(はお)った、から脛(すね)の毛だらけ、図体は大(おおき)いが、身の緊(しま)った、腰のしゃんとした、鼻の隆い、目の光る……年配は四十余(あまり)で、稼盛(かせぎざか)りの屈竟(くっきょう)な山賊面(さんぞくづら)……腰にぼッ込んだ山刀の無いばかり、あの皿は何(な)んだ、へッへッ、生首二個(ふたつ)受取ろうか、と言いそうな、が、そぐわないのは、頤(あご)に短い山羊髯(やぎひげ)であった...
泉鏡花 「唄立山心中一曲」
...この目前見渡す限りの稲の秋は甚だそぐわない嘘のような眺めであった...
寺田寅彦 「札幌まで」
...手狭な悒鬱(うっとう)しい彼の六畳の書斎にはとてもそぐわない雰囲気(ふんいき)であった...
徳田秋声 「仮装人物」
...そぐわない気持で見廻して...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...彼はどんな言葉もみなそぐわないのを感じた...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...それとなんだかそぐわない長い感じのする歯並...
豊島与志雄 「椿の花の赤」
...変に自分の意志とそぐわない...
豊島与志雄 「反抗」
...彼は自分の感情にそぐわない多くの言葉を...
豊島与志雄 「反抗」
...手際とにそぐわないのだ...
中里介山 「大菩薩峠」
...そぐわない思いでした...
中里介山 「大菩薩峠」
...地獄絵巻のような凄まじい環境――死物狂いの絶叫と、焔の咆哮と、雪片に交(まじわ)る火の粉の渦巻の中に、それはまたなんという、そぐわない、優しい声でしょう...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...そぐわないモダンさで群れている...
林芙美子 「新版 放浪記」
...年にそぐわない厭味たっぷりの姿を見るとすぐお君は...
宮本百合子 「栄蔵の死」
...断絶する線はこの手法にはそぐわない...
柳宗悦 「工藝の道」
...こんな裏長屋にはそぐわないようなあだっぽい女だったが...
山本周五郎 「落葉の隣り」
...ふしぎと秀之進にそぐわない感じがあった...
山本周五郎 「新潮記」
...四隣にそぐわないものに聞こえてくる...
吉川英治 「随筆 新平家」
...そぐわない気がしたが...
吉川英治 「べんがら炬燵」
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