...したり顔の批判を与えるかも知れないが...
太宰治 「織田君の死」
...二寸ほどの列車! おい、見ろみろ、はっはっは、何てしたり顔の、こましゃくれた爬虫類だろう!NOW OVER Dungeness.谷・巨木・まっくろな突起...
谷譲次 「踊る地平線」
...手曳きをする時佐助は左の手を春琴の肩(かた)の高さに捧(ささ)げて掌を上に向けそれへ彼女の右の掌を受けるのであったが春琴には佐助というものが一つの掌に過ぎないようであったたまたま用をさせる時にもしぐさで示したり顔をしかめてみせたり謎(なぞ)をかけるようにひとりごとを洩(も)らしたりしてどうせよこうせよとはっきり意志を云い現わすことはなく...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...時々西洋へ出かけて目新しい機械や材料を仕入れて来ては田舎学者の前でしたり顔にひけらかすようなえらい学者でノーベル賞をもらった人はまだ聞かないようである...
寺田寅彦 「猫の穴掘り」
...先生はれいのしたり顔で「日本人には大和魂がある」といつていつものとほり支那人のことをなんのかのと口ぎたなく罵つた...
中勘助 「銀の匙」
...当時の様を想像して見てしたり顔に...
夏目漱石 「草枕」
...ぬかりはありませんやね」と鼻子はしたり顔をする...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...みんなしたり顔で生きている...
林芙美子 「新版 放浪記」
...……わしには、その辺のところに、何か曰(いわ)くがあるように思われるんだが、いったい、お蔦という娘は、平常(ふだん)もそんなことをやりつけているのかどうか、その辺のところをたずねて見たか」伝兵衛は、したり顔で、「そこに如才はありません...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...そのお方までがしたり顔にそんな事を言ってよこされた小憎らしさ...
堀辰雄 「かげろうの日記」
...すべらぎのかざしに折ると藤の花及ばぬ枝に袖かけてけりしたり顔なのに少々反感が起こるではないか...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...学士(がくし)博士(はかせ)などいう人々三文(さんもん)の価(あたい)なしということしたり顔(がお)に弁(べん)じぬ...
森鴎外 「みちの記」
...寒笑はひどくしたり顔に坐り直した...
山本周五郎 「新潮記」
...「それでいいわ」彼女もしたり顔に頷き返し...
山本周五郎 「山彦乙女」
...したり顔で「足利家も源氏の御嫡流...
吉川英治 「私本太平記」
...諸州の役署へ布達しておけ」知事はしたり顔である...
吉川英治 「新・水滸伝」
...――死んで行く人間がなんで、これから花も咲こう実(み)も成ろうとする若い女子(おなご)と、ゆくすえの約束などを誓えよう」武蔵が思わずその点まで口を辷(すべ)らすと、城太郎には、そこの要点はまだよく理解し難(がた)いものと見え、すこし怪訝(けげん)そうに、「だから、……お師匠様、そんな約束なんかしないことにして、ただお通さんと会えばいいじゃないか」と、したり顔にいう...
吉川英治 「宮本武蔵」
...そして柳生様のお邸にいる木村助九郎様からここに、御返事をもらって来ました」懐(ふところ)の奥のほうから、返書の一通を出して、したり顔をした...
吉川英治 「宮本武蔵」
便利!手書き漢字入力検索