...トその色も……薄いながら、判然(はっきり)と煤(すす)の中に、塵を払ってくっきりと鮮麗(あざやか)な姿が、二人が机に向った横手、畳数(たたみかず)二畳ばかり隔(へだ)てた処に、寒き夜なれば、ぴったり閉めた襖一枚……台所へ続くだだっ広い板敷との隔(へだて)になる……出入口(ではいりぐち)の扉(ひらき)があって、むしゃむしゃと巌(いわ)の根に蘭を描いたが、年数算(さん)するに堪(た)えず、で深山(みやま)の色に燻(くす)ぼった、引手(ひきて)の傍(わき)に、嬰児(あかんぼ)の掌(てのひら)の形して、ふちのめくれた穴が開いた――その穴から、件の板敷を、向うの反古張(ほごばり)の古壁へ突当(つきあた)って、ぎりりと曲って、直角に菎蒻色(こんにゃくいろ)の干乾(ひから)びた階子壇……十(とお)ばかり、遥かに穴の如くに高いその真上...
泉鏡花 「霰ふる」
...八方袖(そで)の下撫斬流(したなでぎりりゅう)と来るから受けきれねえ」七十七勝安房守が二条城で任官して後のこと...
中里介山 「大菩薩峠」
...前歯を逆にぎりりと噛(か)んでから...
夏目漱石 「門」
...ぎりり、時計のねぢをばまいて牧師が階段、ことことおりた...
新美南吉 「月の角笛」
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