...二人(ふたり)が始めて離れ離(ばな)れに寝たのにも一言(ひとこと)もいわないのがかすかに葉子を物足らなく思わせたけれども...
有島武郎 「或る女」
...物いうごとにかすかに動くやや上気した頬(ほお)の上部...
有島武郎 「星座」
...聞えるのは怪紳士の靴がかすかに床をする音ばかりであった...
海野十三 「四次元漂流」
...かすかに管弦楽が聞こえてきた...
江戸川乱歩 「影男」
...風に乗ってかすかに流れてくるシヴァリング砂州の浮標のベルの音が...
リチャード・オースティン・フリーマン Richard Austin Freeman 妹尾韶夫訳 「歌う白骨」
...その消えていく姿がかすかにわたしの眼にとまっただけであった...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...柳麗玉 (かすかに口を動かして)まあ!安重根 ははははは...
林不忘 「安重根」
...オルガンの音がかすかに講堂とおぼしきあたりから聞こえて来る...
田山花袋 「田舎教師」
...かすかに息をしているようだった...
豊島与志雄 「丘の上」
...やっと眼瞼(まぶた)がかすかに震え...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「早すぎる埋葬」
...今や波間では灯もほのかに赤みがかり――時もかすかに浅く息をしている――そして地鳴りもなくこれから下へ下へその街が落ちゆく定めでも地獄はいずれ千の玉座から立ち上がりその都に敬礼してみせよう...
エドガー・A・ポオ Edger A. Poe 「ポオ異界詩集」
...何やらかすかに叫んで...
堀辰雄 「曠野」
...耳の中はかすかに鳴っているのである...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「衣裳戸棚」
...立った時に宮の行っておいでになる寺の鐘がかすかに聞こえてきた...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...かすかにかぶりを振った...
山本周五郎 「その木戸を通って」
...時刻は十時をまわったらしい、こっちの河岸もまっ暗だし、対岸の浅草のほうも灯はまばらで、遠くかすかに、夜廻りの拍子木の音が聞えた...
山本周五郎 「ひとでなし」
...かすかに生命の保持をいとなんでいる胃ぶくろの方でも...
吉川英治 「江戸三国志」
...まだヴィオロオヌの声がかすかに耳へ響いてくるのに...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「にんじん」
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