...煮え切らない影と光の変化がかすかに山と海とをなでて通るばかりだ...
有島武郎 「或る女」
...美しい二の腕があらわになって、そこに、彼女のあだ名の由来をなした、あの黒トカゲの入墨が、これのみは今もなお生あるもののごとく、主人との別離を悲しむかのように、かすかに、かすかに、うごめいているかに感じられたのである...
江戸川乱歩 「黒蜥蜴」
...門の椽と塀の上の瓦と一尺ばかりの空虚からは桧葉の植込の一部がかすかに見られる...
長塚節 「我が庭」
...かすかに見たとも言われて居ります...
野村胡堂 「礫心中」
...かすかにそれをみとどけねばならぬ...
原民喜 「ある時刻」
...空二はかすかに聞き憶えのある声のやうにおもへたが...
原民喜 「雲雀病院」
...しかし、それは、呟きのように低く、力のない声で、かすかに、唇が動いた程度にすぎなかった...
火野葦平 「花と龍」
...かすかに点灯しているため暗さがますます際立った...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「四日闇夜」
...ラルフがかすかにうめき...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「煉獄」
...姫はかすかに涕泣(すすりな)きを洩らす...
林不忘 「若き日の成吉思汗」
...「かすかに知つてゐた...
牧野信一 「陽に酔つた風景」
...かすかにもお前(まへ)の夢(ゆめ)に通(かよ)はぬのか裂(さ)き捨(す)てられる立禁(たちきん)の札(ふだ)...
槇村浩 「生ける銃架」
...その歌はクレヴィンの耳にかすかに不思議な音にひびいた...
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 松村みね子訳 「琴」
...かすかに聞えるだけで...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...かすかに生命の保持をいとなんでいる胃ぶくろの方でも...
吉川英治 「江戸三国志」
...新九郎様」「…………」彼はかすかに顫(ふる)えていた...
吉川英治 「剣難女難」
...かすかに、矢さけびは聞えてくるが、この闇夜(やみよ)ゆえさらにいくさのもようが知れぬ」「いまはちょうど、双方必死(そうほうひっし)の最中(さいちゅう)かと心得ます」「そうか、いくら伊那丸でも、三千からの三河武士(みかわぶし)にとりかこまれては、一たまりもあるまい」「ところが、斥候(ものみ)の者のしらせによると、にわかに四、五百のかくし部隊があらわれて、亀井武蔵守(かめいむさしのかみ)をはじめ、徳川勢をさんざんに悩(なや)めているとのことでござる」「ふむ……とすると、勝ち目はどっちに多いであろうか」「むろん、さいごは、徳川勢が凱歌(がいか)をあげるでござりましょうが」「さすれば、こっちは高見(たかみ)の見物、伊那丸の首は、三河勢(みかわぜい)が槍玉(やりだま)にあげてくれるわけだな」「が、ゆだんはなりませぬ...
吉川英治 「神州天馬侠」
...かすかに顔を振るだけであった...
吉川英治 「宮本武蔵」
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