...それにも拘らず、お師匠様なる人は相変らず悠長に構えて、別に差当っての用事を頼むのでなく、意見を加えがてら、話し相手のお伽(とぎ)にするようなあんばいで、「お前は、まだ知るまいが、あの駒井様という殿様のお家は、近いうちに潰(つぶ)れます、いま甲府では飛ぶ鳥を落すほどの御支配様だけれど、遠からず、お家をつぶされて、お預けになるか、または御切腹……これはまだ内密のことだから誰にも話してはなりませぬ……そうなるとこちらの殿様が、そのあとをついで御支配に御出世なさるようにきまっている、だからお前も、そのつもりで、うちの殿様のお面(かお)にかかるようなことをしてはなりませぬ、まあ、じっとして、もう暫らく見ておいで」と言っているお絹は、何か企(たくら)むことがあって、やがてそれが成就(じょうじゅ)した時を楽しみにしているように見えます...
中里介山 「大菩薩峠」
...その上に殿様がお預けになるか...
中里介山 「大菩薩峠」
...お父様は矢張りこんな風に昔の名前を云っておられました)にお預けになるので...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
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