...盲目(おめく)の勝梅さんの方はトットとすませて二絃琴に通うのだった...
長谷川時雨 「明治座今昔」
...「おのれ、憎さも憎し――それ、みんな、こやつをからめ取って、さんざんに打った上、お役人に突き出せ!」広海屋が、おめくのを、妻女が、泣きながら、押しとどめて、「まあ、あなた、しずまって下さいまし、みんなも手出しはなりませぬぞ」と、いって、長崎屋の前に、地べたにひざまずいて、「これ、長崎屋さま、三郎兵衛さま――どんな恨みが、主(あるじ)にはあるかも知れねど、赤子には、罪というてあるはずはなし、どうぞ、お腹が癒(い)えるよう、わたしの身を存分になされて、あの子だけは返して下さるよう――お返し下さるよう――」「は、は、は、その御愁歎(おなげき)は、ごもッともごもッとも」と、芝居がかりで、三郎兵衛は、あざみ笑って、「さりながら、聴かれよ、御内儀、あれも敵(かたき)の片われ、どうも、お言葉にしたがうわけにはなりませぬ」「でも、一体、あの子を、どうなされて?」若しや、やはり、たずさえている匕首で、咽喉ぶえを切り割かれてしまったのではないか――と、内儀は、必死の想いでたずねる...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
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