...少(すくな)くとも表面(うわべ)には大(たい)そう幸福(こうふく)らしい生活(せいかつ)を送(おく)っていました...
浅野和三郎 「霊界通信 小桜姫物語」
...いつも自分から視線をはずしておろおろしているヨシ子を見ると、こいつは全く警戒を知らぬ女だったから、あの商人といちどだけでは無かったのではなかろうか、また、堀木は? いや、或いは自分の知らない人とも? と疑惑は疑惑を生み、さりとて思い切ってそれを問い正す勇気も無く、れいの不安と恐怖にのたうち廻る思いで、ただ焼酎を飲んで酔っては、わずかに卑屈な誘導訊問(じんもん)みたいなものをおっかなびっくり試み、内心おろかしく一喜一憂し、うわべは、やたらにお道化て、そうして、それから、ヨシ子にいまわしい地獄の愛撫(あいぶ)を加え、泥のように眠りこけるのでした...
太宰治 「人間失格」
...わたしは一生涯うわべだけの妻で結構ですから姉さんを仕合わせにして上げて下さいとそういって泣くのでござりました...
谷崎潤一郎 「蘆刈」
...うわべは人の羨みそうなお身の上でござりましたけれども...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...表(うわべ)はあまりけば/\しくなくつて...
田山録弥 「小説新論」
...上部(うわべ)はどこまでも派出に装(よそお)っている...
夏目漱石 「草枕」
...疳(かん)の筋(すじ)が裏を通って額へ突き抜けているらしい上部(うわべ)を...
夏目漱石 「虞美人草」
...上部(うわべ)は知らん顔をしていた...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...結果が高木に対して勝つか負けるかに帰着する上部(うわべ)から云えば...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...そうした外観(うわべ)だけを見ている人は...
萩原朔太郎 「小泉八雲の家庭生活」
...広間はこちらでございます」召使がこれ以上ないような嘲笑に似たうわべだけの恭しさで彼に告げた...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...貴方はまだこのような粗末な住居に留まっておられるんですか?」「確かに」と彼はうわべは無頓着な様子で言った...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...高潔な人間ともてはやすのも表面(うわべ)だけで...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...うわべで判断するな...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「謎の四つ指」
...悉くがうわべの悧巧がりに過ぎないんだ...
牧野信一 「夏ちかきころ」
...我々の心をうつのは些細な事情とうわべの形とである...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...うわべのものにつつまれているので...
吉川英治 「親鸞」
...彼の何事もうわべに出さない性質と平常(ふだん)の修養とを強く示していた...
吉川英治 「松のや露八」
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